第167話 屍の国・其之伍
俺たち連合軍の二割が、スケルトンどもとバトルになっていく。
その間に【ディスオーダー・リカバリー】を施された面子が次々と戦闘に加わってくる。
一年生書記らは、休むことなく、全員に“異常回復”を発動し続けているようだ。
余談ではあるが、[屍の国]に来た初日、精気を吸われた連中に、これを試してみたものの、効果はなかった。
話しを戻そう。
俺達が戦いを有利に進めていく2~3分後、“マンティコア”が再び上昇したのである。
少し遅れて、他のキマイラたちも、空中に浮いてくる。
骸骨どもの10万ほどを【爆発】で粉微塵にしながら、
「そこまで長時間は、“咆哮”が効かねぇか。」
俺が眉間にシワを寄せたところ、直径10M×高さ40Mの【炎柱】で敵を燃やしている魔人姉が、
「おそらく、キマイラは、LV.80前後の集団でしょう。」
「あちらのマンティコアが咆えた際に、こちらの、トロールさんは膝を地に着いていましたが、ミノタウロスさんは平気でした。」
「なので、あのマンティコアのレベルは、ミノタウロスさんを、やや下回っており、それ以外のキマイラは、これよりも低い、と、考えられます。」
との見解を示した。
「成程、確かにな。」
納得した俺は、
「先にマンティコアを倒しておくか。」
「また、咆えられる前に。」
と、背中に翼を出現させて、飛行したのである。
俺に気付いた“ゾンビマンティコア”が、鼻から〝スゥ――ッ〟と息を吸う。
(!)
(“咆哮”か?!)
と思いきや、口から直径2Mで黒色と紫色が入り混じった【火の玉】を放ってきたのだ。
俺は、[大地の槍]を右斜め下から左舐め上へと振るい、“ファイア・ボール”を〝ボンッ!!〟と消滅させた。
しかし、距離を詰めてきていたマンティコアが、右の前足を、俺の頭に叩きつけてくる。
「くッ!」
槍を横にして、柄で〝ガキィンッ!!〟と鋭い爪を防ぐ。
だが、相手は、体を右回りで反転させて、“サソリの尾”で刺しにきたのだ。
尾の先が、俺の右の“二の腕”に〝カンッ!〟と当たる。
幸いにも、精度の高い具足によって阻めたが、モロに刺さっていたならば、【麻痺】していたであろう。
「ふぅ―ッ。」
安堵した俺の視界に映ったのは、マンティコアに合流して来るキマイラの群れだ。
隙が生じた俺に、マンティコアが蝙蝠の翼を〝ブンッ!〟と動かし、最大幅1M×長さ5Mで“三日月状の風”を飛ばしてきた。
「ぬおッ!」
俺は慌てて、キマイラ軍団よりも7~8M上に逃れる。
「にゃろぉうッ!」
忌々しさに表情を歪めた俺は、左の掌を突き出して、直径10Mの魔法陣を構築していく。
「グルルゥッ!」
低く唸ったマンティコアを先頭に、100万もの“キマイラのゾンビ”どもが、俺めがけて突進してくる。
(やべぇッ!!)
(この数は対応しきれねぇッ!)
俺が焦ったタイミングで、
ウオオオオオオオオ――――ッ!!!!
と、誰かが咆えた事によって、キマイラ達が、またも地面に墜ちていく。
それは、[狼の王]によるものだった。
「よっしゃッ!!」
この流れで、俺は、何百発もの“雷”を、
ズババババァ――――ンッ!!!!
と発射したのである。
MPの殆どを消費した攻撃によって、これがヒットした奴らが“黒焦げ”になった。
マンティコアも例外なく。
俺は、“アイテムBOX”から取り出した[MP回復ポーション]を飲み干す。
地上の様子を見てみたら、異常状態から回復した仲間たちが奮戦していた。
(あっちは、このまま任せて良さそうだな。)
と、判断した俺は、未だ起き上がれないでいる残りのキマイラどもを、“氷漬け”にしていったのである―。