第165話 屍の国・其之参
さっきもそうだったが、アンデッド軍の5割はスケルトンだ。
残りの3割がゾンビで、2割が死霊である。
空中から迫ってくる霊どもに、姫殿下が直径5.5Mの、一年生書記が直径4.5Mの、魔法陣を構築して迎え撃つ。
聖女は幅5㎝×長さ30㎝の、クレリックランサーは幅4㎝×長さ20㎝の、【光線】を、それぞれに何百本も放っていく。
彼女らが死霊を粒子に変えていっている間に、俺たちはスケルトンやゾンビと戦う。
とは言え、霊の数は約20万なので、精気を吸われている面子も見受けられた。
こっちは2400ぐらいであり、数的に不利である。
それでも、一年生の【武術士】と、二年生の【弓士】による、アーティファクトを軸として、俺たちの魔法やスキルに、魔銃などで、充分に渡り敢えていた。
前半は…。
結局、気が付けば、数の暴力に押され始めていたのである。
【加護】を用いても。
連中は既に死んでいるからか、俺やアサシンの【可視化】でステータスを確認できない。
例えば、[レベル????/HP????/MP????/攻撃力????/防御力????/素早さ????]みたいにしか表記されないのだ。
なので、敵の戦闘力が分からない状況でのバトルになっている。
ま、一撃で動かなくなる奴らも多くいたので、全体的には、そこまで強くはない。
だが、なかなかにしぶとい屍どもがいたり、味方の半数ほどが精気を吸引されて地面に膝を着いたり横倒れになってしまい、徐々に追い詰められていった。
5分以上が経ち、
(くッ! 判断を誤ったか!?)
俺が眉間にシワを寄せたタイミングで、アンデッド軍の、右側から“狼軍”が、左側から“魔人軍”が、突撃してきたのだ。
両軍は、どうやら、自分たちが受け持っていた屍どもを全滅させたらしい。
更に、南東の“狼軍”が、南西の“馬軍”に合流している。
ともかく、俺たちと激突している敵軍が崩れ出した。
「もうひと踏ん張りだ!」
「押せぇ――ッ!!」
俺の号令で、疲労困憊になっていた“トーキー隊”が、
「うおおおお――――ッ!!!!」
と、気合を入れ直したのである…。
「すまねぇ、助かった。」
礼を述べる俺に、
「なに、構わん!」
「寧ろ、これだけの数で、敗北を喫さなかったのが素晴らしい限りである!!」
狼の王が返す。
「それにしても…、まるで示し合わせたかのように襲撃してくるとは……。」
「近隣の街から進軍してきたのでしょうか?」
魔人の女王が疑問を呈したところ、
「間違いないでしょうね。」
馬の女王が頷いた。
「やっぱ、二日くらい前に現れた“火の玉”どもが各地に伝えたんだろうな。」
「しかし、あそこまで足並みが揃うとは…?」
俺が不思議そうにしたら、
「アンデッドは不眠不休で活動できるみたいなので、そういう意味では造作もない事なのでしょう。」
半天馬たるロードが教えてくれたのである。
「う~む。」
「と、なると……、これからも、屍の大軍が襲ってくるかもしれんな。」
「我ら連合軍の4割は精気を吸い取られ、体調が悪くなっている故、今日は、もう、休んだが良いかもしれん。」
人狼たるロードが渋い顔つきになったので、
「ああ、そうしよう。」
俺は、同意したのであった―。