第163話 屍の国・其之壱
魔人姉による【瞬間転移】で、いつものメンバーが[狼の国]の王城に赴いた。
魔人の女王らは、既に到着していたようだ。
「うむ、揃ったな。」
「軍勢を都の北に待たせておる故、早速、移動しようぞ!」
ワーウルフのロードが宮廷魔術師に命令し、俺たちは、そこへとテレポーテーションしたのである。
狼側と魔人側の兵士たち計1300万と合流した後に、[屍の国]との国境付近へと“転移”したら、馬たちの軍100万が先に到着していたのだった。
狼の国は、大将軍・中将軍・小将軍を動員している。
魔人の国は、右将軍と後将軍を連れて来ていた。
魔人姉妹の父と兄である。
馬の国は、左近衛大将・左近衛中将・左近衛少将を伴っていた。
左大将は、全身が黒いオスの“バイコーン”で、頭に二本の角が生えている。
まぁ、馬なのだが…、銀色の甲冑を装着していた。
左中将は、メスで半獣の“ユニコーン”らしく、額に一本の角が見受けられる。
人間の部分も、馬の部分も、【ビショップ】の衣服を纏っていた。
左少将は、“四者会合”に同行していた半獣でメスのリスだ。
ウィッチらしい黒色のローブを纏っている。
ちなみに、狼の王は【武闘家】の、魔人の女王は【剣士】の、馬の女王は【騎士】の、装備品を身に着けていた。
「では、出発しよう。」
人狼たる王に促されて、進軍を開始する俺たちであった…。
[屍の国]に入るなり気付いたことがある。
空を“暗雲”が埋め尽くしているのだ。
「これは?」
首を傾げる俺に、右斜め後ろの魔人妹が、
「伝承によりますと、ここは、“呪われた国”との別名があるそうでして…、〝ロードが消滅しない限り、晴れることはない〟のだそうです。」
と説明してくれたのである。
「なるほど。」
軽く頷いた俺の眼前に、霊魂が現れた。
緑と白が入り混じった感じだ。
日本で言うところの“火の玉”に違いない。
全員が構えるなか、〝ユラユラ〟と漂っていたそれらが〝スゥ―〟と消えたのである。
「なんだったのでしょうか?」
疑問を口にした聖女に、勇者が、
「偵察だったのかもしれませんね。」
との見解を示す。
「その可能性は高そうだな。」
納得する俺だった。
一時間ぐらい歩いた頃に、俺たちの方へと向かってくる集団が見えたのである。
数は、およそ100万といったとこだろう。
人間や魔物の、スケルトンにゾンビと幽霊による軍だ。
骸骨どもは、【騎士】や【戦士】に【剣士】といった防具と、槍・斧・剣を、装備している。
どこからともなく、
「突撃ぃ――ッ!!」
という声が響き渡ってきた。
狼の王による号令だ。
「後れを取るな!」
「俺達も行くぞッ!!」
現魔王との対決に備えて、少しでもレベルアップしておきたい俺は、トーキーの面子を動かしたのであった―。