第161話 四者会合・後編
「じゃあ、今から、その、“屍の国”とやらに、行ってみるか?」
訊ねた俺に、
「いや、奴は、王城に籠っているようだから、この数で突入しても厳しかろう。」
狼の王が返した。
「つまり??」
首を傾げたら、
「あの国には、アンデッドたちが集結しています。」
「なかでも、霊は、“光線”でなければ、滅する事が出来ません。」
馬の女王が教えてくれたのである。
更には、人狼たるロードが、
「“屍の国”は、魔王の傘下ゆえ、何かと厄介である。」
と、補足した。
「要は…、最悪、魔王が出張って来ると?」
懸念する俺に、
「可能性を考慮しておくべきでしょうね。」
半天馬たるロードが頷いたのである。
(マジか…。)
俺は頭が痛くなってきた。
[エルフの国主]による予知では、魔王に殺されてしまう未来なのだから。
魔人の女王が、
「であれば……、軍勢を整えましょう。」
と述べる。
これに、
「うむ!」
「そうすべきであろうぞ!」
ワーウルフである王が同意し、
「それでは、私ども“馬族”も、千年に亘る中立を、今、ここに破り、参戦いたします。」
半獣のペガサスである女王が、宣言した。
そこからは、どれだけの日数で、どれほどの兵を集められるか、といった話し合いになったのである。
この結果、三日後に、[狼の国]の北方=[屍の国]との国境、に、赴くことに決まった。
ただし、軍勢の規模は〝バラバラ〟になりそうだ。
俺の【絶対服従】が効くのであれば問題は無かったのだが…、〝アンデッドは知能が乏しいので難しい〟との事だった。
各自の計算によると、[狼の国]は800万であり、[魔人の国]は500万で、永らく中立を保ってきた[馬の国]は戦闘員が少ないため100万くらいの、兵数になりそうだ。
対する[屍の国]は、全員が戦えるので、軽く見積もっても1億になるらしい。
俺達は、聖女/三将軍/勇者一行/モンスター集団/魔人姉妹/魔法剣士を動員する。
そういう流れにて、俺らの会合は終了し、それぞれが、一度、帰ることにしたのだ。
新たな戦に備えるべく…。
再びの、トーキー王城の[会議室]にて、これまでの経緯を説明していき、
「と、いう訳で…。」
「三日後の午前九時に、“屍の国”との国境付近に集まることになった。」
「ま、俺たちは、そこに行った事がないから、“狼の国”の王城に移動して、連れていってもらう予定になっている。」
そう伝えたところ、
「魔王と戦うことになるんですか?」
一年生書記が少なからず不安そうにした。
彼女以外も表情が曇っているようだ。
これに、勇者が、落ち着きながら、
「遅かれ早かれ魔王と激突する定めになっているのであれば、臆する事なく、堂々と、やり合うしかありません。」
と主張したのである。
「確かに、そうかもしれませんが…、“蘇生の宝玉”を先に使ってしまったのは、まずかったのではないでしょうか?」
窺ってきた小将軍に、俺は、
「ま、正しい意見だな。」
「だが。」
「今回、勝てなければ、何度、生き返っても、結果は同じだろう。」
「なので、“屍の国”で出来るだけレベルを上げて、魔王に挑むしかあるまい。」
そのように告げた。
「例え命が燃え尽きようとも、我は、最後まで、お供しますぞ、ご主君!!」
ミノタウロス元帥が気を吐き、
「そう、ですね…。」
「細かいことに捉われず、“暗黒の時代”を阻止するために、ただただ全力を出し切るとしましょう!」
小将軍が前向きになったのである。
これによって、誰もが覚悟を決めたようだ―。