第160話 四者会合・前編
現れたのは、ペガサスの半獣と、人型の馬に、ワーシープ(羊)だ。
「もしかして、お待たせしましたか?」
訊ねてきたのは半獣の天馬である。
「いや、殆ど同じタイミングだったが…。」
返した狼の王に、
「それは良かったです。」
「……、申し遅れました、私は、“馬の国”の女王でございます。」
半ペガサスが会釈した。
その胴体は白い馬で、上半身は人間の女性である。
〝ゆるふわ〟に編み込んでいる髪と尻尾は白銀だ。
人の部分にも、馬の部分にも、スカイブルーを基調とした煌びやかな衣装を纏っていた。
“人間の方の背中”には白い翼を有している。
左右の耳は馬で、これまた白い。
頭には、小さめで銀色の王冠が見受けられた。
彼女の左斜め後ろに控えている馬の獣人は茶色で、鬣は黒い。
右斜め後ろに居る羊の半獣は、〝もふもふ〟したショートヘアーに角が生えており、どちらも白っぽいようだ。
黒い軍服を着用している二人は、[馬の国]の王城を守る者たちらしい。
二足歩行でオスの獣人は“右近衛中将”で、メスのワーシープは“左近衛少将”という、役職に就いているのだそうだ。
どちらも略した場合は、“右中将”に“左少将”と、呼称するとの事だった。
なにはともあれ、ワーシープが自身の[アイテムBOX]から、大きめのテント(ゲル)を取り出して、国境の真ん中に置いたのである…。
テント内には、一つの円卓と四脚の椅子があった。
三脚は通常の椅子で、一脚は横長だ。
円卓の、北側に魔人の女王が、東側には狼の王が、南側に俺が、それぞれ腰掛ける。
西側に在る横長の椅子には、馬の女王が4本の脚を折りたたんで座った。
俺の方にケツを向けて。
「すみません。」
「私にとっては、この体勢が、しっくりくるので、失礼します。」
馬のロードが謝ったので、許してあげたのである。
「で?」
「“義眼の奴”は、お前たちの国から、どんなアーティファクトを盗んだんだ?」
俺が質問したところ、
「私どもの国からは、“黄泉の甲冑”を奪っていきました。」
「元々は“不死の甲冑”という名で、これを装備すれば、〝即死するような傷を負ってもHPが1で止まり、命を落とさずに済む〟という代物だったそうです。」
「しかしながら、“邪悪なる神々”の呪いによって様変わりしてしまい、その後は、〝装着した者のHPを吸収していく〟ようになりました。」
ペガサスたる女王が答え、
「我らの国からは、“常闇の剣”を盗みおった。」
「もとは“魔破の剣”との名称で、全てを葬り去ることが出来たそうだ。」
「だが、この剣も、邪神どもによって変わってしまった。」
「霊やスケルトンを屠るのは不可能になっておるのと、使い手のMPを吸い取るらしい。」
ワーウルフである王が続いた。
「ふぅ~む。」
少し考えた俺は、
「どやって奪っていったんだ?」
そう訊ねたのである。
これに、馬の王が、
「王城に、アーティファクトを封印している小部屋があるのですが……、警備していた兵士たちによれば、〝夜中に、突然、出現し、盗んでいった〟との話しです。」
「兵は、それを阻止しようとしたものの、返り討ちにあい、4名中2名が息を引き取ってしまいました。」
と説明した。
更には、
「我々の所も似たような状況だ。」
狼の王が述べたのである。
「たった一人で忍び込んだうえに、か??」
それは難しいんじゃないかと首を傾げる俺の背後から、
「大叔父は、なかなかに腕の立つ“アサシン”でしたので、きっと可能でしょう。」
魔人姉が口を開き、
「確かに。」
と、妹が頷いた。
「成程、な…。」
「それで?」
「奴が、今どこに居るのか、情報は?」
新たに聞いてみたところ、
「ある!」
人狼型の王が返してきたのである。
このロードによれば、
「つい最近、我が配下の者たちが、潜伏先を探し当てた。」
「なにせ、狼は鼻が利くからな…。」
「その魔人は、現在、“屍の国”を拠点にしておるようだ。」
との事であった―。