第158話 魔人の国
俺達は、今、[魔人の国]に訪れている。
姉妹によれば、島ではあるが、それなりに大きく、トーキー王国と同じくらいの規模らしい。
国民の6割は魔人で、4割は獣人や半獣との事である。
補足として…、生徒会長の計算によると、トーキー王国と日本列島の面積は、ほぼ等しいそうだ。
俺らは、まず、王都に在る魔人姉妹の実家に案内された。
そこで、彼女らの母親と祖母が迎えてくれたのである。
祖父は既に他界しており、父親と兄が王城で勤めているそうだ。
ちなみに、この国は、“左将軍・右将軍・前将軍・後将軍”の[四将軍]らしい。
姉妹の家系は、およそ500年に亘り、最も地位の高い[左将軍]を歴任してきたそうだ。
しかし、大叔父が起こした事件の責任を取るべく、祖父が自ら“左将軍”を辞めて、処罰を願ったとの事である。
当時の王は、先祖代々、功績を残してきたことを考慮して、引退を止めたり、罰を下さぬよう、試みたものの、祖父が頑として受け入れなかったとの話しである。
その結果、左将軍の任を解き、1年間の謹慎処分を科したらしい。
謹慎が明けてからは、父と兄が、再び王に仕えることになったそうだ。
現在、実力を認められ、父親が[右将軍]に、兄が[後将軍]に、それぞれ就いているとの経緯だった…。
魔人姉妹の家で小休止していた俺達は、王城からの迎えが来たことによって、[謁見の間]に赴いた。
赤絨毯の両脇には、四将軍に、宰相と各大臣が、居並んでいる。
正面に向かって、魔人姉妹が頭を下げ、聖女が王族らしい挨拶の姿勢となり、勇者が軽く会釈した。
俺はというと…、眼前の光景に、首を捻ったのである。
何故なら、幅4M×高さ10Mぐらいの玉座に、身長170㎝ほどの女性が腰掛けていたからだ。
どう見ても、アンバランスである。
この魔人は、インドやアラブの女性みたいに、目から下を紫色のスカーフのようなもので隠していた。
身に着けている服も、そっち系の民族衣装といった感じだ。
スリムながらナイスバディである。
一つ前の王は男性だったが、今は、この“女王”が統治しているそうだ。
肌は青く、長くて黒く全体手にウェーブしている髪を頭の上で“お団子”にしており、額にはサークレットが輝いている[魔人の女王]が、
「……、何か?」
と、訊ねてきた。
「いや、体と椅子のサイズが合ってねぇなと思って…。」
そう返したところ、
「ああ。」
理解した様子の女王が、
「王位を継承した者は、大きくなったり小さくなることが可能になりますので。」
「例えば、このように。」
全身を〝カッ!〟と光らせたのである。
一瞬、目を瞑った俺らが、再び開いてみたら、[魔人の女王]の背丈が8Mくらいになっていた。
更には、それに合わせて、衣服なども大きくなっている。
「成程。」
俺が納得したところ、
「お分かりいただけたようで。」
またしても光った女王が、元の背丈に戻った。
「さて、それでは、本題といきましょう。」
「数日前に、こちらから“鳥の国”と“馬の国”に“狼の国”へ、大使らを派遣しました。」
「かつて、我々の国を追われた“義眼の魔人”の非礼を、お詫びするために。」
「そこで、“馬の国”および“狼の国”と協議を重ね、つい先ほど、不逞の輩を捕まえるために連携することが決定しました。」
ここまでの流れを説明する[魔人の女王]に、
「義眼の奴は、何を、やらかしやがったんだ?」
との質問を投げかけてみたら、
「その二つの国で封印されていた“アーティファクト”を盗んだようです。」
と返ってきたのである。
「!!」
「アーティファクト!」
少なからず驚く俺に、
「ええ。」
頷いた女王が、
「何を企んでいるのかは不明ですが、悪しき事態にならぬよう、防がなければなりません。」
「そこで…、これより、“狼の国”へと移動します。」
と、述べたのであった―。