第157話 一報
トーキー王城の広間にて、理事長や生徒会長が、チヨーダ森林で生き返った面子に、今日に至るまでの出来事を説明したうえで、謝罪していた。
また、蘇生者たちが、これから先、戦闘員になるか、一般的な職種に就くかを、アンケートしたそうだ。
その結果、〝あんな怖い思いは二度としたくない〟との理由で、戦わずに生活していけるジャンルを、全員が選んだのである…。
翌日――。
[魔人の国]より、魔人姉妹に【念話】が入った。
兄からだそうだ。
なんでも、彼女らの大叔父が[北の大陸]に滞在していると、魔人の宰相から言付かったとの事である。
そう、以前、ガルーダに呪いをかけた義眼の奴だ。
どうやら、[馬の国]と[狼の国]で、新たに問題を起こしたらしい。
そこで、魔人姉妹が、最後に目撃情報があったという[狼の国]に赴きたいので、暫く暇を貰いたいと、頼んできたのである。
俺の部屋にて、
「二人だけで解決できるのか?」
「もし戦闘になった場合、勝てる見込みは?」
と聞いてみたところ、
「分かりません。」
妹が首を横に振り、
「それでも、ケジメを付けなければならいのです。」
「刺し違えてでも。」
姉が覚悟を示した。
「ふ…む。」
「……、ところで、馬と狼の国は、どんな所なんだ?」
質問した俺に、魔人姉が、
「馬の国は、二足歩行の獣人型や、ケンタウロスに、ユニコーンと、ペガサスなどが、生息しており、この千年、中立を保ち続けています。」
「狼の国は、狼から進化した獣人や、そこから派生した半獣が多く、神々が争った遥か昔の時代には、善神に付き従ったそうでして…、旧魔王との戦いの際は、国を失いながらも徹底抗戦したようです。」
「先祖代々そういう気質のため、現魔王の傘下には入ろうとせず、対立しています。」
と、答えたのである。
「現在の魔王と、か…。」
「だったら、俺も一緒に行こう。」
「共通の敵である魔王を相手に同盟を結べるかもしれないし、お前たちの大叔父の件でも協力してもらえるかもしれぇしな。」
そう述べたら、魔人妹が、
「恐れ入ります。」
と頭を下げたのだった…。
[玉座の間]で、主要メンバーに説明したところ、案の定、聖女や、三将軍に、勇者らと、ミノタウロス元帥が、
「自分たちも、お供します!」
と、言い出したのである。
「いや、大勢で押しかけても殴り込みに来たと誤解されねぇから、取り敢えず少数でいい。」
「もし、それなりの規模となる戦いが勃発しそうになったら、魔人姉妹に迎えに行かせるから、そのつもりでいろ。」
そんな指示を出したら、二年生の【弓士】が、
「せめて、トーキー側と召喚組の代表として、姫と生徒会長は、お連れしたほうがよろしいのでは?」
「魔人だけで訪れても怪しまれるだけかもしれませんので。」
と提案した。
これを受けて、
「確かに…、姉妹の大叔父も魔人だしな。」
「俺達だけだと、かなり警戒されっかも……。」
「よし! 二人も伴おう!」
と、決断したのである。
「じゃあ、“狼の国”に出発するか。」
俺が促したところ、
「申し訳ありませんが、私どもは狼の国に足を踏み入れた事がないので、直接“瞬間転移”するのは不可能でございます。」
姉が返し、
「ですので、まずは、我々の祖国に移動して、狼の国へ渡るのを誰かしらに手伝ってもらおうと、考えております。」
妹が続いた。
「そっか…、だったら。」
玉座から立ち上がった俺は、
「まずは、魔人の国へ行くとしよう!」
そう告げたのだった―。