第154話 反連合軍・其之肆参
トーキー軍とカナーガ軍が、国境付近で睨み合っている。
こちらも、おおよそ、50万と、900万のようだ。
聖女こと“姫殿下”が率いるトーキー軍に、三将軍・魔法剣士・魔人姉妹が参加していた。
ちなみに、彼女らは、馬に乗っている。
また、トーキー国王も、
「娘ばかり危険な目に遭わせるわけにはいかん!」
と、現地に赴いていた。
その側には、〝すぐにでも陛下を城へと避難させられるように〟との配慮で、賢者の姿もある。
他にも、ドワーフ職人らのうち、30名程が見受けられた。
男性7:女性3の割合だが…、この面子は“元冒険者”であり、腕っぷしに自信があるそうだ。
事前に、トーキー王が、〝ドワーフの中から死者が出てしまった場合、国主に申し訳が立たない〟との理由で断ったものの、
「久しぶりに暴れたい!」
「血が騒ぐ!」
「トーキーの魔人殿が持ち帰った宝玉で蘇ることが可能だと聞きました。」
「ならば、心配ないでしょう。」
だのと、各々に、全くもって引き下がらなかったらしい。
致し方なく、陛下が折れる形になったのだが、念の為に、賢者が“ドワーフ国主”を訪ねたのである。
了承を得るべく。
その結果、
「一向に構わんから、好きに使ってやってくれ。」
と一発OKをもらえたそうだ。
なので、ドワーフ達も戦場に来ていたのである。
「皆さん大丈夫でしょうか?」
敵との数の差に、先頭の聖女が自軍の兵を案じた。
これに、左斜め後ろの小将軍が、
「こちらにはレベル100以上が三人もいますし、我々も、かつてよりは充分に強くなっています。」
「それに…、何人かのビショップは“加護”を収得しておりますので、問題ないでしょう。」
との見解を示し、
「然り!」
「相手は50年近く内乱すらなかった国なれば、数分ほど小突き回してやれば慄いて退却しだすに違いありません!!」
右隣の大将軍が、そう述べたのである。
更に、その右隣の中将軍は、
「とは言え、くれぐれも油断なきよう。」
と、警戒を促した。
トーキーの首都で生活している兵士たちは、姫や、各将軍に、勇者一行らと、合同訓練を行う事もあったので、それなりに鍛えられたようだ。
お陰で、誰もが、幾らかレベルアップして、数名のビショップが【加護】を覚えたり、それ以外のジョブらも何かしらの魔法なりスキルなりを得たようである…。
カナーガ軍が、いきなり、800万の兵を動かした。
〝トーキー王国が勇者召喚に成功したらしい〟との噂があって以来、情報収集を欠かさなかったようで、相当に用心しているようだ。
無理もない。
それなりに長いこと平和が続いた国である。
戦に臆しているのだろう。
一気に勝負をつけようと焦り、ほぼ全軍を動かしたみたいだ。
カナーガの軍勢が、トーキー軍を囲むかのような構えで進んで来る。
“鶴翼の陣”みたいなものであろう。
聖女の【伝令】によって、こちらのビショップ達が、全員の攻撃力/防御力/素早さを倍増させたようだ。
左の最前部隊を、魔人の姉が、右を、妹が、それぞれ〝氷漬け〟にした。
そこに、様々な魔法や魔銃に矢と石が飛んでいく。
魔銃は、ドワーフらの助力もあって生産量がアップしたようで、トーキーの兵たちは100本ほど所有している。
それはさて置き。
敵軍の中央付近に、聖女が直径5Mの【光線】を放ち、魔法剣士が直径10Mの範囲を爆発させた。
これらによって、敵の足が止まったのである。
その機を逃さず、トーキー軍のうち45万くらいが、突撃を開始したのだった―。