第148話 最深層
一年の生徒会書記が、
「行ってみますよね? 主様。」
と窺ってきた。
「んー、俺の“大地の槍”や、お前とアラクネに魔法剣士のあれらのスキルは、使い果たしちまってるしなぁ…。」
「これまで以上の強敵が待ち構えていた場合、全滅しかねないが……、ま、危なかったら、勇者か聖女の“瞬間転移”で、山頂の遺跡まで脱出すればいいか。」
と、判断した俺に従い、皆が魔法陣の上に乗ったところ、眩い白光が発せられたのである。
俺達は、魔法陣が収まるくらいの広間に移動していた。
天井までの高さは8M程だろう。
俺たちの眼前には、幅5Mの廊下が奥へと続いている。
その両脇には、等間隔に、縦3Mぐらいの扉や、魔石を利用した壁掛けランタンが、設けられていた。
床・壁・天井は石レンガで、扉は金属で作られている。
どちらも既に風化していたので、元々の色合いは不明だ。
アサシンである二年生書記が、
「どうやら、危険は無さそうですね。」
との見解を示す。
「ああ、そうみたいだな。」
と頷いた俺を先頭に、誰もが廊下の最奥へと歩き出したのである…。
道中、左右の扉を次々に開けてみたところ、どの室内も30畳ほどの大きさで、割と豪華な家具が置かれていた。
おそらく、千年前に避難した皇帝一族が生活していたのであろう。
ちなみに、部屋数は20だった。
廊下の突き当りには、縦6M×横4Mのダブルドアがあり、その上部はアーチ状になっている。
俺は、それを押し開き、中へと入っていった。
そこは、高さが10Mで、500人ぐらいを収容できるドーム型になっている。
この空間の中央には台座が設置してあり、その上にドッチボールサイズの赤い宝玉が飾られていた。
どことなく“ドラ○エ8”の[アル○ンハート]を彷彿とさせる。
そんな宝玉を覆うように、淡くて赤い光が放たれていた。
更に、周囲には、盛り沢山の金貨や銀貨と、幾種もの武器に防具が散乱している。
「オォウ、アメージィーング!」
と、ウィッチが瞳を輝かせ、クレリックランサーが、
「トーキー王国の予算の足しにしては如何でしょうか?」
と提案した。
しかし、一部を手に取った姫殿下が、
「昔の通貨みたいなので、今は価値が有りません。」
と、首を横に振る。
だが、
「それでしたら、一度、溶かした後に、新たに作れば良いのでは?」
との弓士の意見を採用する事にしたようだ。
そのような会話をしている最中に、宝物を勝手に漁っていた武術士が、ある装備品を無意識に探し当てたのであった―。