第147話 ダンジョン攻略へ・其之捌
声がした方を振り向いてみたら、【魔法剣士】の中剣が白く光っていた。
彼女が、それを、
「フンッ!」
と突き出したところ、幅20㎝×長さ2Mの“風の槍”が、
ビュオッ!
と、飛んでいき、“黒銀のゴーレム”の右脛を、
ボコンッ!!
と凹ませたのである。
「お前…、それって、“伝導”か?」
と、いささか驚きつつ訊ねる俺に、
「はい。」
「ミスリルとオリハルコンとの連戦で、レベルが100に到達し、収得できました。」
と返した。
(どうりで、さっきの休憩中にニヤニヤしていた訳だ。)
と、納得した俺は、
「よし、取り敢えず、右足をブッ壊すぞ!」
と告げたのである。
俺と弓士が、“土の塊”に“爆破の矢”を放つ。
魔法剣士は、【伝導】による氷・水・風・雷などを展開していく。
その間にも“アダマンタイトのゴーレム”が両腕を動かしまくって【抑制】から逃れようとしていたが、無駄だった。
しかし、俺たちが右脛を半分くらい削ったあたりで、タイムリミットを迎えた“鎖”が消えてしまったのである。
そして、“ゴリラ型”が拳を握った両腕を、高く上げた。
再び、床を叩いて隆起させるつもりなのだろう。
俺は、
「急げ、急げ、急げ、急げぇッ!!」
と、少なからず焦る。
それに呼応するかのように、彼女らの攻撃も加速していく。
意に介さない敵が、腕を振り下ろす。
(間に合わなかったか?!)
俺が諦めかけた瞬間、
ボンッ!!
と右脛が破裂した“黒銀”が、バランスを崩して、
ドォォンッ!!
と、横倒れになった。
“アダマンタイト”が両の掌を床に着き、起き上がろうとする。
そこを狙い澄ましたかのように、アラクネのリーダー格が【粘糸】を吐き出して、両方の肘下を捕らえた。
更には、【クレリックランサー】が4本の鎖で、“ゴリラ型”の左脚を拘束していく。
これで、どちらも、今日の限度回数を使い切ってしまったのである。
決めきるしかない俺達は、敵の顔を集中射撃していった…。
27~28秒が経った頃、遂に、相手の鼻から上を粉砕したのである。
此処のダンジョンのゴーレムたちは、両目と頭を失うと動きが停止するみたいだ。
俺たちは、これまでの戦いで、その事に気付いていた。
「ふぅ――ッ。」
と俺が呼吸するのと同時に、成り行きを静観していた連中が、
「おっしゃぁあーッ!!」
と、ガッツポーズしたのである。
そのタイミングで、床の中央に大きな魔法陣が出現した。
「遺跡に帰る為のモノじゃなさそうだな。」
と口を開いた俺に、聖女が、
「ええ。そっちは、私どもが下りてきた階段の側に有りますし…。」
と頷く。
周りを見回していた勇者が、
「このフロアには、次の層への階段が無さそうですよ。」
と、告げる。
この状況に、
「ひょっとしたら、その魔法陣で、地下10階に移動するのかもしれませんね。」
と一年生書記が推測したのだった―。