第145話 ダンジョン攻略へ・其之陸
第九層への階段を下りながら、一年生書記が、
「さっきはミスリルからのオリハルコンだったので…、次は“アダマンタイト”かもしれませんね。」
と予想していた。
B9に到着してみたところ、八層までの造りとは異なって、そこは、高さ10Mのドーム状になっており、床も含めて全部が“白い石”で出来ていたのである。
あたかも、ドラゴ○ボールの“精神と○の部屋”みたいに。
二千人ぐらいを収容できそうな空間の中央に、一体だけ佇んでいたのは、背丈が4Mの“黒銀のゴーレム”だった。
「あれって“ゴリラ”だよな?」
と、誰ともなく訊ねる俺に、生徒会長が、
「間違いなさそうです。」
と頷く。
俺や二年生書記が【可視化】を使ってみたところ、LV.200である事が判明した。
どうやら、一年の生徒会書記が正しかったようで、“アダマンタイト”のようだ。
ミスリルにオリハルコンもそうだったが、攻撃力と防御力が高い。
また、B8までのゴーレムらがスキルや魔法を所持していなかったのに対して、コイツは違っていた。
何かしらのスキルを有している“アダマンタイトのゴーレム”が、
ズシリ!ズシリ!
と近づいてくる。
勇者と聖女に魔女が、炎/光線/氷を放つ。
それらが、敵の顔や胴体にヒットするも、無傷だった。
「マジか!」
と、眉間にシワを寄せた俺の頭上を、
ビュンッ!
と[爆裂の弭槍]による矢が飛んでいき、ゴーレムの右肩を、
ボンッ!
と、爆破したのである。
それなりに距離があったので、直径10㎝×深さ5㎝ほどの陥没でしかなかったが、ダメージを負わせられることが分かっただけでも収穫だった。
クレリックランサーが【抑制】を展開しようとする。
しかし、それよりも早く、ゴリラ型が、拳を握った両腕を上げるなり、その側部(小指の方)を、床に、
ドンッ!!
と叩き付けた。
これによって、床が横二列に、
ズドドドドドドドドッ!!
と、隆起しながら迫ってきたのである。
位置的に、向かって左側をジャイアントアント参謀役が【突抜】で、右側をラミアのリーダー格が【硬変】で薙ぎ払い、
ドッゴォンッ!!
と砕いた。
この【硬変】は、ラミアの尾が、5秒だけ、竜の鱗のように硬くなるらしい。
LV.100未満は1日4回が限度で、LV.100以上は1日8回となり、消費MPは1回100ポイントとの事だった。
ラミアのリーダー格は、ここまでの積み重ねによって収得したみたいだ。
話しを戻そう。
隆起していた床が粉々になっていくなかで、“アダマンタイト”が次のアクションへと移行する構えになった。
嫌な予感がした俺の、
「逃げろぉッ!!」
という号令で、全員が散らばっていく。
そこに跳躍して来た“黒銀”が、
ズドォオンッ!!!!
と、着地して、直径5M×深さ1Mのクレーターを作り出した。
間一髪で避けていた皆の背筋が〝ゾクッ!〟とするなか、一年生書記が少し怯えながらも“白銀かつ半透明の鎖”で、ゴーレムの腕と脚を一本ずつ拘束したのである。
一年の生徒会書記が、
「おそらく、もって30秒です!」
と告げた次の瞬間に、〝グッ〟と屈伸してから真上にジャンプした敵によって、
バギィインッ!!
と、鎖が断裂されてしまった。
ものの2秒で。
クレリックランサーが、
「嘘…。」
と目を丸くするのと同時に、誰もが驚愕したのであった―。