第142話 ダンジョン攻略へ・其之参
勢いよく振り下ろされた“獅子型のゴーレム”の右前足を、ヘルハウンドが左へのサイドステップで逃れる。
そこへ、いつの間に距離を詰めていたトーキーの小将軍が、損傷が大きくなっているゴーレムの左脛に、
シュババババババババババンッ!!
と、10連発の【乱れ打ち】をヒットさせた。
これによって、脛が〝ボンッ!〟と半円状に抉れたのである。
その好機を逃さない弓士が三本目の矢を放ち、
ドゴォンッ!!
と砕いた。
バランスが崩れるのを堪えようとする“ミスリルのゴーレム”に、最前線の右端に居たミノタウロス元帥が近づいていく。
そして、左側に回り込んだ元帥が、相手の腹を、下から、バトルアックスで払い上げた。
スキル【破壊】を用いて。
敵が、
バギィインッ!!
との音を響かせると共に、
ズドォーンッ!!
と、横倒れになる。
見れば、長さ50㎝×幅10㎝×深さ25㎝の亀裂が入っていたようだ。
ミノタウロスの後ろに隠れるようにして、コソコソと付いて行った一年生書記が〝ここぞ〟とばかりに飛び出して、その罅を、杖の下先で、
「えいッ!」
「やあッ!」
「とうッ!」
と何度も突いていく。
当然、ゴーレムも、おとなしくヤラレ続けてはあげない。
左後ろの足裏で、【クレリック】を蹴ろうとする。
それを、【自己犠牲】からの大盾で防いだのは、トーキー大将軍だった。
重くて強烈な一撃を、
ドンッ!!
と、受け止めた大将軍が、
「ぐぬぅ~ッ!」
と眉間にシワを寄せる。
二人の側に駆け寄った聖女が、獅子型の腹部めがけて、直径1Mの光線を発動した。
この衝撃で、ほんの数㎝、敵が離される。
「ふぅーッ。」
と、溜息を吐いたトーキーの大将軍が、優しく、
「無茶はいけませんぞ。」
と諭し、姫殿下が、
「全くもって、その通りですわ。」
と、頷いた。
「はい、ごめんなさい。」
と素直に頭を下げて謝った一年の生徒会書記が、顔を上げるなり、
「でも、今のが良い結果に結びついたようです!」
「どうやら☆」
と、満面の笑みを浮かべたのである。
そのタイミングで、獅子型が起き上がろうとしていた。
これに気付いたミノタウロス元帥が戦斧を叩きつけて阻む。
俺達と対峙していたミスリルが、相方の窮地を察してダッシュする。
そのままスピードにノッたゴーレムが、倒れている獅子型を飛び越えて、元帥にぶつかっていく。
「むッ!」
とミノタウロスがバトルアックスを横にして、正面から受けるも、2Mほど、
ズザザザザーツ!
と、後ずさりさせられてしまう。
全員が、そっちに注目している隙に、倒れていた獅子型が立ち上がってしまった。
(ちょっと厳しくなりそうか?)
と俺が様子を窺っていたら、割と破損している方のミスリルに、地面から出現した幅15㎝×長さ5Mかつ“白銀で半透明の鎖”4本が、
グルグルグルグルッ!
と、巻き付いて、拘束したのであった―。