第140話 ダンジョン攻略へ・其之壱
人族の“先祖礼拝”期間が終わり、城の会議室に、俺を始めとして、国王/姫/宰相/賢者/各将軍/生徒会長/生徒会の二人組/魔人姉妹/ミノタウロス元帥/ジャイアントアント参謀役が、揃い踏みしていた。
俺は、トーキーの国王らに、森人族の長が見た未来を説明する。
やがて魔王が軍勢を率いて東の大陸に襲来するかもしれないし、それが起きない歴史に変わったかもしれない、という内容だ。
王が、
「ふぅむ。」
「用心するに越したことはありますまい。」
と、口を開く。
それに対して、宰相が、
「事が起きた場合、防ぎようがないのでは?」
と述べる。
俺は、
「まぁ、そうだな。」
「なので…、久しぶりに“ゴーレムのダンジョン”に潜ろうと思う。」
「今回は、レベル上げは元より、完全制覇を目指して。」
と、告げた。
俺は少数精鋭で、かつて倒せなかった“ミスリルの獅子型”に挑むことにした。
メンバーは、勇者・聖女・魔法剣士・トーキー三将軍・一年生クレリック・二年生アサシン・三年生ウィッチ・武術士・弓士・元帥・参謀役・トロール・魔物の各リーダーである。
それ以外は、第一層~第六層でのレベルアップに励んでもらう。
魔人姉妹は、[魔道機関車]と[飛行艇]の魔石選びが大詰めのため、王城に残っている。
第七層に辿り着くまでの間、後衛の一年生書記が、ちょくちょく最前線に飛び出してきて、杖でゴーレムを殴ったり刺したりしていた。
よっぽど“クレリックランサー”に進化したいらしい。
危ない場面も幾らかあったが、合宿中に、何名かの【武闘家】や【アサシン】から体捌きを教わっていたので、どうにか躱していたようだ。
やばそうな時には、本人も後列に控えていたので、大事には至らなかった。
さて。
そんなこんなで、俺たちは、地下7階へと足を踏み入れたのである。
全長5Mで“輝く灰色”の獅子型ゴーレムが、二体とも、こちらとの距離を詰めるべく動き出す。
どちらのレベルも150ぐらいだ。
そのうちの一体が結構な速度で、俺めがけて突進してくる。
すかさず、最前列の、右端から二番目に居る二年生書記が【挑発】を用いた。
しかし、ゴーレムには知能が殆ど無いので、釣られなかったようだ。
俺は急ぎ、[大地の槍]の切っ先で、床に横線を引き、幅2M×高さ4M×厚さ50㎝の“壁”を、
ズドォオーンッ!!
と隆起させるも、下から1Mくらいの位置を、
ズバンッ!!
と、貫通してきたのである。
まさかの事態に、俺が、
「うおッ!」
と驚く。
勢い止まらず、両方の前足で、俺の胸辺りを、
ドンッ!!
と、押した敵によって、仰向けで倒されてしまう。
そのまま乗っかってきた“獅子型”が、俺の顔を狙って牙を剥く。
相手は“ミスリル”なので、かなりの重量だ。
こっちは特殊な鎧のお陰で潰されずに済んでいるものの、自由には動けず反撃が難しい。
割とピンチな状況で、俺の右斜めに控えている弓道部エースが矢を放つ。
[爆裂の弭槍]の効果にて、
ボォオーンッ!!
と左目付近に直撃したゴーレムが、2Mくらい弾き飛ばされた。
いや、ひょっとしたら、バックステップしたのかもしれない。
IQは低いのに、戦闘に関しては機敏だ。
B6までの連中とは違うプログラミングが成されているのだろうか?
ともかく、矢の当たった部位が直径30㎝×深さ20㎝ほど陥没しており、その周囲に罅が入っていたので、俺は立ち上がりながら、
(いける!)
と、確信したのである。
だが、ついついそっちに気を取られていた俺に、もう一体が襲い掛かってきたのであった―。