第137話 水の王
海から、巨大生物が〝ザッパァーン!!〟と浮上した。
俺達から100M以上は離れた位置で。
ソイツが、〝スーッ〟と向かってくる。
まるでドラゴ○ボールのシェ○ロンかのような蜷局の巻き方をしているので、全長は分からない。
その体を覆う鱗は青紫色だった。
「あれって、そうだよな?」
と訊ねる俺に、エルフの国主が、
「“リヴァイアサン”です。」
と、答える。
(やっぱりか。)
そう思いつつ、【可視化】で確認してみたら、【LV.220/HP:8800/MP:7700/攻撃力:6600/防御力:5500/素早さ:4400】であることが判明した。
俺は、
「マジかよ…。」
と固唾を吞む。
更に詳しく見ていこうとしたところ、俺達の7~8M手前で止まった“水の王”が、
「海中に生きし者たちを無闇に脅かしおって。」
「己らが売った喧嘩、買おうてやろうぞ!」
と述べて、口を〝あんぐり〟開く。
「むッ!」
と、反応した国主補佐官が、縦8M×横4M×厚さ50㎝といった特大の【マジック・シールド】を、俺らの眼前に出現させる。
ほぼ同時に、リヴァイアサンが、幅2Mで水色のブレスを、
ドォウッ!!
とブッ放してきた。
それが、魔法の盾に、
ズバッオゥッ!!!!
と、直撃し、互いに消滅するも、凄まじい余波が砂を派手に散らす。
その衝撃に、俺らも、いささか後ろへと吹き飛ばされてしまう。
寝ていた連中がテント(ゲル)から、
「なんだ? なんだ?」
「何事なの??」
と外に出てくるなか、“海の王”が、
「ふむ。」
「少し手加減しすぎたか?」
「ならば、本気を出すとしよう。」
と、二撃目の準備に入る。
「先程ので、全MPを消費してしまいましたので、次を防ぐのは不可能です。」
「申し訳ございません。」
と補佐官が現状を説明した。
すぐそこまで忍び寄る“死”に〝ゾクッ!〟とした俺は、翼を出現させて、相手の鼻先まで急ぎ接近し、両手を横一文字に広げながら、
「待て! 待ってくれ!!」
「わざとじゃないんだ!」
「きちんと謝罪するから、許してくれ、な!?」
と、説得を試みる。
しかし、
「今更、遅いわッ!」
「命で償えぃッ!!」
と取り付く島もない。
俺は、皆殺しを覚悟した。
のだが…。
「ん?」
「これは??」
と、“水の王”が首を傾げたのである。
そして、
「魔人よ、なぜ己から、あ奴の気配がする?!」
と質問を投げかけてきた。
「“あ奴”って……、もしかして千年前の魔王のことか?」
「キマイラの。」
と、聞き返した俺に、
「然り!」
「一体どういう事か包み隠さずに申せ!!」
とリヴァイアサンが促す。
ひょっとしたら窮地を脱せるのか?
逆に事態が悪化してしまうのか??
どちらにせよ、俺は、“海の王”に、旧魔王のことを語っていった―。