第136話 合宿だョ!全員集合
一週間が経ったAM10:00頃に、俺たちは、勇者によって、エルフの首都の南門に“転移”した。
事前に【念話】で連絡していたので、森人族の長と、国主補佐官に、冒険パーティーが、出迎えてくれたのである。
余談になるが、冒険者らは、国主館に宿泊させてもらっていたらしい。
なにはともあれ、ドワーフを代表して棟梁が、エルフ達への挨拶を済ませた。
「それでは、参りましょう。」
との、エルフの国主にて、東の海岸へと【瞬間転移】したのである。
これまた話しが脱線するが、彼女と補佐官は政務のため、直ぐに都へと帰ったのであった。
それからは、なかなかに楽しく過ごせた。
部活をやっていた連中は、朝練・昼練・夕練での、走り込みや、水泳と、筋トレなどに、励んでいる。
これに合わせて俺たちも、剣や槍といった武器に、魔法とスキルの、修行に勤しんでいた。
それ以外の時間帯は、一年生書記が望んだとおり、スイカ割りなど、何かしらの遊びに興じている。
ビーチフラッグに関しては、俺とハーピーたちが飛ぶことを禁止されてしまった。
“反則技”との理由で。
結果、ヘルハウンドらと、アサシンたちが、いい勝負になっていたのである。
ちなみに、急ピッチで水着を作ってもらったのだが、女性はビキニタイプが少ない。
殆どがスク水みたいな感じだ。
どうやら、羞恥心によるものらしい。
逆に、男性陣はトランクス型が多く見受けられる。
決して学校指定のものではないので、それなりに洒落た印象だ。
なかにはブーメラン派もチラホラいるが…。
巨躯のミノタウロス元帥&トロールは、大型のトランクスを着用していた。
魔物らの水着姿は、結構シュールである。
食事に関しては、バーベキューは元より、こちらの世界で料理人になっている教師や生徒たちが、腕を振るってくれていた。
(たまには、こんな平和も良いなー。)
なんて、ほっこりする俺だったが、この後、寿命が縮みそうになったのである…。
それは、三日目の朝だった。
まだ多くの面子が眠っている頃、日の出と共に起床した俺が、テント(ゲル)の外に出てみたら、左斜め前10Mぐらいの砂浜で、【武術士】が何やら鍛錬していたのである。
「あたたたたーっ!!」
と拳を繰り出しまくって。
ボクっ娘に近づいた俺が、
「お前…、それは、もしや?」
と、訊ねたら、
「うッス! 主様!」
「北斗百○拳を極めるつもりッス!」
と返してきた。
「いくらなんでも、不可能だろう。」
と、述べたところ、
「じゃあ…、 “無駄無駄無駄無駄”にするッス。」
「で、最終的には、“ウリイイイイ”って奇声を発しながら時を止めてみせるッス!」
と言い出したのである。
俺の、
「いや、あれはスタ○ドの能力であって、人間には扱えねぇぞ。」
との指摘に、武術士がジョ○立ちの一種である“DI○立ち”をしたまま、
「え?!」
と、フリーズした。
そんな状況で、右斜め前15Mほどの波打ち際から、
「エクスプロージョン!」
「エクスプロージョン!」
と何度も連呼する声が聞こえてきたのである。
そちらに視線を送ってみたら、三年生のウイッチが、海に向かって、直径2Mの“火炎玉”を次々に放ちまくっていた。
「おい、アイツは何をやっている?」
との質問に、体勢を戻したボクっ娘が、
「あー、確か…、“爆裂魔法”とやらを収得するつもりらしいッス。」
と、答えたのである。
俺は、早足で〝ザッザッザッザッ〟と進みつつ、
「いやいやいやいや、待て待て待て待て!」
と魔女との距離を詰めていく。
ウイッチの左肩に、右手を〝ポンッ〟と添えて、
「それは、止めておけ。」
と、諭す俺に、
「ホワァ~イ?」
「ナゼ、デスカァ??」
と首を傾げた。
「まず、パクリだからだ。」
「次に、その魔法を覚えてしまったが最後、使ったら暫く動けなくなる。」
「それよりなにより…、こういう事をやっていると、フラグが立ちかねん!」
と、説明していたところ、森人族の長と国主補佐官が“転移”で、俺たちの側に〝シュン!〟と現れたのである。
エルフの国主が、慌てた様子で、
「もしかして、遅かったでしょうか?」
と窺う。
「ん?」
「先刻、新たな未来を見ました。」
「どんな?」
「……来ます。」
「誰が?」
「“海の王”とも“水の王”とも呼ばれている、私どもでは決して勝てない存在が。」
と、顔面蒼白になる森人族の長であった―。