第126話 魔人族に関して
魔人の姉が、
「それは、左のみが義眼で、それなりに年老いている魔人ですか?」
と尋ね、妹が、
「髪の毛や、眉に、顎髭が、白くありませんでしたか?」
と、続いた。
これに、中将軍のサンダーバードが、
「ソイツは、黒いウィザードローブのフードを被っていたから、よくは分からなかったが…、確かに髭は白かった。」
と返す。
「もしや、仲間か?!」
と、睨み付ける大将軍のグリフォンに、
「いいえ。」
と否定した姉が、
「ただ…、おそらくは、私どもの大叔父であろうと思われます。」
と、述べたのである。
「ん?」
と首を傾げた俺に、妹が、
「祖父の弟です。」
と、教えてくれた。
二人によると…、その大叔父とやらは、もともと【アサシン】だったものの、とある戦闘で左目を失ってしまったらしい。
その後、沢山の書物を読み漁り、魔力を込めた義眼を自分で完成させたそうだ。
かなり出来が良かったことに自信を持った本人は、そこから、アーティファクトを超えるアイテムを作れないかと、研究に没頭するようになった。
歴史に名を残したいという承認欲求で。
何十年も失敗を重ねてばかりで、なかなか上手くいかない状況に苛立った大叔父は、危険な実験を反復するようになったらしい。
その過程で数人の死者を出してしまい、激怒した“魔人の王”によって国外追放されたのだそうだ。
今から約10年前に…。
俺の、
「そういや、お前たちの国って何処にあるんだ?」
との疑問に、姉が、
「東の大陸と、北の大陸の、中間に在る、大きな島国が、私たちの出身地です。」
と答えた。
更に妹が、
「風を操ることに長けているジン族が治めています。」
「風以外の魔法も扱えますが…。」
と、補足したのである。
これも一年生書記と三年生ウィッチの受け売りになるが…、ジンとは、アラジンの魔法のランプで有名なジーニーであり、女性版をジンニーヤと呼ぶらしい。
イフリートの女性型は、イフリータとのことだ。
ジンもイフリートも、魔人や、魔神に、精霊とされており、伝承によって異なる。
また、魔獣もしくは妖怪との説もあり、定まっていない。
イスラム教では、ジンたちは魔神であり、その頭が“堕天使イフリート”なのだそうだ。
そんなイフリートは、俺たちの世界におけるファンタジーものにおいて、四大精霊として登場している。
しかし、火を司る精霊は、本来であれば“サラマンダー”らしい。
それがいつしか、イフリートに座を奪われてしまったとの事だ。
これは、あくまで、俺らの世界のファンタジー系での話しだが…。
それはそれとして。
エルフの国主によれば、この異世界でのイフリートは、かつて封印された邪神の一員らしい。
ジン族は、その邪悪なる神々によって生産された魔人である。
そこから派生した魔人たちの種族というか、分家みたいなものが、軽く100数はあるそうだ。
魔人姉妹たちの先祖も、ジン族から枝分かれしたらしい。
なにはともあれ。
“鳥の王”であるガルーダの状態異常を解いてやろうと決めた俺だった―。