第121話 VS.バード国の幹部たち・其之漆
こちらから見て、正面からは【アサシン】の二年生書記、左側からはジャイアントアント参謀役、右側からは【騎士】のハーフエルフ兄が、ダガーやソードを縦横無尽に振るっている。
しかしながら、西方領主のレッドキャップに悉く、スウェーされたり、鉄の爪で〝ガギィンッ!〟〝ガシャンッ!〟と防がれてしまっていた。
人間も魔物も含めた他の近距離型が改めて包囲していくも、またもや【真空蹴り】で弾かれてしまう。
ただ、ハーフエルフの兄だけは、【防ぎきる者】で阻んだようだ。
そんな彼が、着地するレッドキャップに【縦断】を発動した。
叩き付けられる大剣を左に躱した西方領主が、騎士の右脇腹を、左フックによる鉄の爪で刺す。
鎧を貫通する【カウンター】をモロに決められたハーフエルフ兄が、
「ぐぬッ!」
と痛みに顔を歪める。
体勢を立て直した参謀役が、自分に背を向けているレッドキャップに、【横断】を試みたものの、バック宙回転の“ムーンサルトキック”を、頭に、
バンッ!!
と、くらわされてしまった。
これは別に【スキル】ではなく、武闘家の身体能力によるものらしい。
再び地に足を着けた西方領主が、起き上がろうとする二年の生徒会書記に、“ストレートパンチ・アッパーパンチ・手刀・肘鉄・裏拳・膝蹴り・回し蹴り・ハイキック・ローキック・かかと落とし”などを繰り出す。
こっちは武闘家のスキルで、その名も【コンボ】だ。
消費MPは100ポイントであり、LV.100未満は1日4回、100以上は8回となる。
また、レベルが100に到達していないと10コンボが限界で、100を超えていれば20コンボいけるらしい。
[鉄の爪]を装備しているレッドキャップに、20発をヒットさせられたアサシンが、うつ伏せになって、
「がはッ!」
と血を吐く。
ここらの面子が犠牲になっている間に敵の背後を取った勇者が、剣を抜きながら斬り付けた。
それは、勇者専用のスキル【一閃斬り】で、50ポイントのMPを消費するそうだ。
1日の使用限度は、LV.100未満だと5回であり、100以上であれば10回となる。
さながら、緋村○心や、我妻○逸のような、抜刀術ではあるが…、彼女の場合は“抜剣術”と言ったところだろう。
とにもかくにも、これによって、西方領主が両膝を屈したのである。
倒れてすぐに[回復ポーション]を使っていた二年の生徒会書記が、チャンスを活かすべく、上体を起こすと共にダガーを投げつけた。
それが、腹部に、
ブシュッ!
と、刺さったレッドキャップが、
「ぐッうぅッ!」
と歯をくいしばりつつ、眉間にシワを寄せる。
その右首に参謀役が、左首にハーフエルフ兄が、それぞれに、ソードの先端を〝ピタッ〟と添えたのであった―。