第117話 VS.バード国の幹部たち・其之参
西方領主のレッドキャップが、左の[鉄の爪]で、俺の首を刺しにかかる。
動けない俺は、
「ぐぬぅッ!」
と睨み付けるしかなかった。
そんな俺たちの間に、〝ヒュンッ!〟と割って入りながら、[ダガー]で、
ガキィンッ!!
と、鉄の爪を払った者がいたのである。
それは、二年生書記の【アサシン】だった。
レッドキャップが、少しバランスを崩しながらも、右の“鉄の爪”を、外側から内側へと振るう。
アサシンの左脇腹に、爪がヒットした。
はずなのだが…。
まるで実体のない二年生書記を〝ブンッ!〟と真っ二つに斬ったのである。
これはアサシンのスキル【残影】で、あたかも、ドラゴ○ボールにおける“残像拳”のようだった。
LV.50未満は1度に1体までしか出せないが、LV.50~99は1度に2体、LV.100~149は1度に3体、LV.150~199は1度に4体と、“多重残像拳”みたいなことが出来るようになっていくらしい。
消費MPは1体につき50ポイントで、1日の使用限度はレベルに関係なく5回迄だそうだ。
いずれにせよ、【残影】によって、レッドキャップの左側に移動したアサシンが、ダガーで突こうとするも、今度は逆に、左の[鉄の爪]で、
ガシンッ!
と防がれてしまった。
全身の痺れが解けた俺が、頭を叩き付けるべく、[大地の槍]を振り被るも、それに気付いたレッドキャップが、大きなバックステップで3歩ぐらい下がって、距離を取る。
そのタイミングで、サンダーバードが嘴を開く。
再び“雷”を放つために。
だが、10名ほどの【狙撃手】が[魔銃]から発砲した魔法を当て、サンダーバードの攻撃を阻んだ。
〝ならば!〟といった感じで、鹿タイプの怪鳥である東方領主の“ペリュトン”が、青い翼を動かす。
それによって、最大幅2M×長さ5Mでクリスタル形の“氷の塊”が、
ビュオッ!!
と、飛んできた。
前に出て【破壊】を用いたトーキーの中将軍が、右から左へと薙ぎ払うバトルアックスを、これに、
ドッゴオォンッ!!!!
と衝突させる。
ビキビキビキッビキィーンッ!!
と、亀裂が入った“氷の塊”が、
ドスン!ドスン!
と地面に落ちていく…。
俺を中心に、右側に陣取っている面子が一進一退になっている状況で、左側の面子もバトルを繰り広げていた。
互いの中間あたりで、バード国の南方領主であるトロールと、うちのミノタウロス元帥&トロールの、武器や盾が〝ガシィンッ!!〟〝ガキンッ!!〟と火花を散らす。
南方領主の頭上4Mくらいの位置に飛翔した北方領主のハーピーが、翼から200もの羽を放つ。
それらが、こちらの元帥&トロールの顔や腕などに刺さるなり、
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!
と爆発したのである。
どうやら、LV.100を超えたハーピーが収得できる【爆裂尾羽】というスキルらしい。
レベルが100未満だと通常の【尾羽】しか使えないそうだ。
隙を見計らっていたコカトリスが再び【猛毒】を発し、こちらのミノタウロス&トロールが、
「くッ!」
「むッ!」
と、膝を屈してしまう。
この機を逃すまいと、“鉈”とも言えなくない[ラージソード]を真横にフルスイングすべく、体制を整えて、左足を〝グッ〟と踏み込む敵のトロールだった―。