第111話 アーティファクトに関して
多くの者たちが宴の二日酔いで頭痛に襲われているAM09:00頃。
オーク族の女王らとの別れの挨拶を済ませた俺達は、エルフ国の西端に在る砦へと【瞬間転移】したのである。
その北門には、森人族の長や、国主補佐官に、砦の指揮官(男性)と副官(女性)であるエルフが、待っていたのだ。
「お戻り戴き、ありがとうございます。限りなき御方。」
と会釈した国主に、まだ残っている酒で気持ちが悪い俺は、
「ああ。」
「……すまないが、小休止させてくんねぇか?」
と、頼んだのだった。
取り敢えず、国境付近まで進んだ俺たちは、野営しながら風に当たりつつ、水を飲んだり、横になったりしている。
季節は夏だが、近くに川が流れているのと、この国には手つかずの自然が豊富なこともあって、割と涼しかった。
外に置かれた小さめのテーブル席に腰掛けている俺が、その対面に座った森人族の長に、
「鳥どもの軍勢は、いつ姿を現すんだ?」
と訊ねたところ、
「おおよそ14時ごろです。」
「なので…、それまでの間、限りなき御方が知りたいことを、なんでも、お教えしましょう。」
と、返してきたのだ。
俺は、
「ん? 例えば??」
と首を傾げたものの、すぐに、
「あ!」
「アーティファクトに、ゴーレムのダンジョン!!」
と、思い出した。
微笑みながら、
「どちらも、エルフの国主のみが代々受け継いでいる口伝がございますので…、まずは、アーティファクトに関して、お話しましょう。」
と述べた彼女が、詳細を語ってくれたのである…。
精霊/竜族/妖精族/獣人族/人族と神々が共に地上で暮らしていたという、遥か昔。
自分たちの欲を満たそうと、突如、反乱を起こした4割の神々が、魔人にダークエルフや巨人を誕生させたり、動植物や昆虫に屍をモンスターに変化させたのだと云ふ。
そこから約50年に亘って、この邪神たちと、6割の善神らが戦い続けたらしい。
当然、魔族と、精霊/竜族/妖精族/獣人族/人族も、激突したそうだ。
そして、この期間中に、善なる神々によって製造されたのが[アーティファクト]との事だった。
しかし、邪悪なる神々に奪われてしまった一部のアーティファクトには呪いが掛かってしまい、制限回数であったり、使用者のHPもしくはMPを吸収するという現象が、発動するようになったのだそうだ。
そんな争いのなかで、双方ともに、かなりの数が命を落とすも、結局、勝負がつかず、疲弊しきった善神たちは、邪神の殆どを封じ込めたらしい。
更には、僅かに残った邪悪なる神々が掃討されてしまい、不利となった魔族が降伏し、平和が訪れたので、安心した善なる神々は旅立ったのだそうだ。
宇宙の至る所に、新しい世界を幾つも創造すべく…。
「善神たちは、邪神らが拠点としていた“中央の大陸”に結界を張り、〝念の為、海底に沈めた〟と、聞き及んでいます。」
と、森人族の長が締め括る。
「大陸そのものをか?!」
と驚いた俺に、
「ええ。」
と、国主が静かに頷く。
「……、〝それが解かれて、邪悪なる神々が放たれる〟みたいなことは、ないよな?」
と彼女に質問してみたら、
「その未来は今のところ見ていませんが…、これから先どうなっていくかは分かりません。」
と、答えたのである。
「“封印が破られてしまう危険性はある”わけか…。」
と呟いた俺は、何だか、より一層に頭が痛くなってしまったのだった―。