第110話 事後処理
『もしかして、鳥どもが攻め込んできたのか?!』
『未来が変わって?』
と訊ねる俺に、森人族の長が、
『いいえ、まだですが…。』
『明日の午後には国境付近に辿り着きそうなので、それまでにはこちらにお戻りになって戴けると有難いです。』
『私どもの国の西端に在る砦であれば、そちらに同行している魔導師のエルフが“瞬間転移”できますので。』
と、告げたのであった。
大広間で、この件を皆に教えたところ、新たなオークロードが、
「夕刻からは宴を催しますので、今日は、お泊りになってくだいませ。」
と述べたのである。
これに、酒好きのトーキー大将軍&ミノタウロス元帥が、
「ご主君! 翌日の朝までは時間がありますので、ぜひ、そうしましょう!」
「うむ! 大将軍殿の言う通りです、ご主君!」
と、〝バイブスいとあがりけり〟状態になったので、
「ま、そういう事だから…、世話になるぞ、ロード。」
と一拍することに決めたのだ。
俺を始めとして、聖女/トーキーの各将軍/勇者/ミノタウロス/トロールに、寝室を用意してもらった。
元四将軍のサテュロスと、東方領主のトロールにも、1つずつ部屋が割り振られたのである。
他の者たちは、中庭にテント(ゲル)を張ってもらい、城内に設置されている兵士たち用のトイレとシャワーを自由に使わせてもらえることにした。
「しかし…、皆さまがエルフの国に渡られた後は、引退している2体のジェネラルや、南方領主が、我らを襲撃するかもしれませんね。」
と、女王の従姉弟である【魔術師】が眉間にシワを寄せる。
「ああー、それなら多分、大丈夫だよ。」
と口を開いたのはサテュロスだ。
彼によれば、元四将軍らは、俺たちが倒したオークロードによって、約一年前にムリヤリ引退させられていたらしい。
なんでも、奴が、〝純血オークの身内で自分の側近を固める〟ために。
既に亡くなっているジェネラルは、蛾の魔物である[モスマン]で、混血のメスだったそうだ。
それ以外の二体は純血のオークだが、新女王などの父親の考えを、一応に認めていたらしい。
だからこそ、彼女たちの兄(前ロード)に疎まれ、隠居させられてしまったとのことだ。
元四将軍たちが不服として結託すれば、あの焼豚兄弟どもに勝てた可能性は充分にあったみたいだが…、この国における「オークロードの命令は絶対」との掟を守って、逆らわなかったらしい。
律儀にも。
サテュロスが、
「そんな彼らをジェネラルに復帰させてあげれば、心から感謝して、忠誠を誓うだろうから、問題ないよ。」
「ただ…、南方領主は“純血主義”のオークだから、警戒しておくべきだね。」
「あの者には、〝裏切りさえしなければ、これまでの地位と領土を約束する。〟〝もし違えれば死を以って償わせる〟とでも伝えて、取り敢えず様子を見ればいいさ。」
と、提案した。
これを受けた女王は、元四将軍を再び任に就かせると共に、異母姉妹である西方領主を、その列に加えることにしたようだ。
更には、補佐役だった従姉弟を北方領主に格上げし、別の混血種を新西方領主とする旨を公表したのである。
俺は、宴会時まで、一度、解散とした。
誰もが大広間から〝ゾロゾロ〟と退室していくなか、ボクっ娘の一年生が、弓道部エースである二年生の左手首を掴んで、〝ズカズカ〟と俺に近づいてくる。
ちなみに2人とも学生服姿だ。
「どうした?」
と窺う俺に、【武闘家】の一年生が、
「ボクたちに御褒美が欲しいッス! ベッドで!!」
「ね!? 先輩!」
と、【狙撃手】の二年生を促した。
頬を真っ赤にした弓道部エースが、
「わ、私は別に!」
と顔を横に向けて、視線を逸らす。
「え? いらないんッスか??」
「じゃあ、ボクだけでも!」
と、積極的な武闘家に慌てて、
「そ、それはズルいです!」
「私も、お願いします! 主様!」
と発言した狙撃手が〝ハッ!〟として、俯きながら〝モジモジ〟と恥ずかしがったのである。
そこからは、宴が始まるまで、代わる代わる結合したのだった―。