第104話 オークロードの本領発揮
矢を放ったのは、弓道部のエースである二年生女子だった。
背丈は165㎝くらいだろう。
“ダン○ち”に登場する[サンジョ○ノ・春○]の髪と瞳が黒くなった印象だ。
しかし、こちらは人間なので、狐の耳などは生えていない。
当然ながら。
ちなみに、武闘家の“ボクっ娘”は一年生である。
弟豚が〝ピクッ!ピクッ!〟と痙攣し、皆に纏わりついていた黒い靄が〝フッ〟と消える。
「お?死んだか?」
と窺う俺に、一年の武闘家が、
「いや、まだ微かに動いてるみたいだから、気を失っただけじゃないッスかね?」
「いずれにせよ、止めを刺すなら、今のうちッスよ、主様。」
と、述べた。
「ああ、そうだな。」
と頷いた俺が、敵に近づこうとしたところ、右斜め前に居たヘルハウンド達のリーダー格が、
「ぜひ、焼豚で、お願いします!主様!!」
と、声を掛けてきたのである。
そちらを見てみたら、10体ほどのヘルハウンドが“犬座り”して、尻尾を〝パタパタ〟させていた。
「しょうがねぇな~。」
と苦笑いした俺が、
「まだ一匹残ってっから、そっちも片付けてからな。」
と、諭したら、
「了解です!」
と揃って敬礼したのである。
俺は、
「取り敢えず…、鮮度が落ちないようにしといてやるよ。」
と、オークソーサラーの真下に、直径5Mの青い魔法陣を出現させたのだった。
ミノタウロス元帥らと攻防を繰り広げていたオークロードが異変に気付き、
「まさか?!」
と、弟の方に視線を送る。
それは丁度、俺が魔法を発動している最中だった。
ロードが、
「やめろおおーツ!!」
と怒鳴るも、時すでに遅しで、俺は、オークソーサラーを“氷漬け”にしてしまったのである。
「ん? なんか言ったか?」
と、俺が振り向いたところ、
「許さんぞぉお~ッ!」
「必ず、あの世で後悔させてくれるわッ!!」
と凄まじい形相になった[豚の王]の巨体が、白い光に包まれていった。
どうやら、通常のスキルとは違うようだ。
北方領主と補佐役が、
「そんな…。」
「まさか…。」
と、息を呑む。
「何だ?」
と俺が首を傾げたところ、その光が〝スッ〟と消えて、オークロードが、ゴールデンイエロー(オレンジ色)の猪型になっていたのである。
オーク族の姫が、
「それは、お父様の能力では?」
と、尋ね、
「王になった者は引き継げるんだよッ。」
「まぁ、純血のみ、だがな。」
とロードが答えた。
領主補佐役が、
「先王の場合は、金色だった筈ですが?」
との疑問を呈したら、
「……、オレ様は、まだ完璧に使いこなせていない…。」
「それでも、お前たちを屍にするには充分だッ!」
と、告げたのである。
俺の“可視化”によれば、【グレードアップ】というスキルであり、1日1回の限度で、1時間だけ全てのスキルを2倍にするらしい。
北方領主によると、前ロードは、2時間に亘って3倍になれたそうだ。
ともあれ、現在の“豚の王”は、[HP3760/MP1480/攻撃力2684(武器装備によって100UP↑)/防御力2508(防具装備によって150UP↑)/素早さ626(装備品の重さで100DW↓)]になっている。
しかも、HPとMPが回復していた。
俺は、急ぎ、クレリック達に【加護】を展開させる。
それとほぼ同じタイミングで、【咆哮】を用いた“豚の王”ならぬ[猪の王]であった―。