第101話 凶事
「配下どもがオレ様に従わないのは、お前たちの仕業か?」
と尋ねてきたオークロードに、
(いや、その容姿で〝オレ様〟って…、“ジャイ○ン”かよッ!)
と、心の中でツッコミを入れた俺が、
「ああ、そうだ。」
と返す。
「どこの集団か知らんが、んッ?!」
「出来損ないの北方領主と補佐役に、黴臭いエルフ族ではないか。」
と、気付いた剛○武、否、[豚の王]が、
「オレ様の弟である“オークウォリアー”はどうした?」
と睨みを利かしてきた。
俺が簡潔に、
「倒した。」
と、述べ、ミノタウロス元帥が、
「なかなか美味であったぞ、あの焼豚は。」
と続いたところ、
「!!」
「生きては帰さんぞおッ!雑魚どもめがあッ!!」
と、ロードが怒りを顕わにしたのである。
しかし、ウィザードローブを纏っている方のオークに、
「落ち着け、兄者よ。」
「四将軍のなかでも屈強なアイツを負かし、こうして堂々と乗り込んでくるぐらいだ、相当な手練れ揃いであろうぞ。」
と諭され、〝フゥ――――ンッ!〟鼻で息を放出したオークロードが、
「確かに、な。」
と、冷静さを取り戻した。
俺の【可視化】によれば、弟豚は“オークソーサラー”で、LV.132の[HP792/MP1320/攻撃力624(武器装備によって30UP↑)/防御力558(防具装備によって30UP↑)/素早さ630(装備品の重さで30DW↓)]である。
豚の王は、LV.138で、[HP1880/MP740/攻撃力1342(武器装備によって100UP↑)/防御力1254(防具装備によって150UP↑)/素早さ313(装備品の重さで100DW↓)]だった。
ステータスを詳しく確認していこうとしていたら、オークロードが、
「弟よ。」
と声を掛け、
「承知。」
と、応じたオークソーサラーの全身が〝カッ!〟と白く光ったのである。
次の瞬間、俺たちの体に“黒い靄”がまとわりついた。
その途端に、可視化が使えなくなってしまったのだ。
「これは??」
との疑問を呈した俺に、魔人の姉が、
「おそらく、魔導士(魔導師)のなかでもレベル120を超えた者が収得できる“封止”ではないかと推測されます。」
と答え、魔人妹が、
「これを発動されてしまうと、〝10分間、スキル並びに魔法を封じ込められてしまう〟と書物に記載されていました。」
と、補足したのである。
これに、【魔術師】のハーフオークが、
「そのような能力があるとは…、初めて知りました。」
と目を丸くし、オーク族の姫が、
「私もです。」
と、軽く頷いた。
状況を理解した眷属らがザワつきだしたところ、ロードが〝ニヤァ~ッ〟と陰険な笑みを浮かべて、
「すぐに、終わらせてやろう。」
と告げたのである。
(これは、結構ヤバイんじゃねぇか?)
と、背中に冷や汗が伝う俺だった―。