第100話 殴り込み
城内には、二千人ほどが入れる大広間が2つあった。
ミノタウロス元帥にトロールといった巨躯や、ジャイアントアントであったりアラクネなどの胴体が大きい魔物たちもいるので、部屋を分けることになったが、俺たちは今、夕食を楽しんでいる。
当然、森人族には、野菜を中心とした料理が振る舞われていた。
それ以外の面子には肉や魚も提供されている。
ちなみに、この城の者たちは、既に“服従”済みだ。
〝フ〟と気になった俺が、
「そういや、お前たちの所は、なんで、スライムやエルフの国に進軍したんだ?」
と、質問してみたら、王女でもある北方領主が、
「スライムは飲食せずとも生きていけますし、エルフは一定の環境保護に努めているので、それなりに自然が豊富なためです。」
と答え、【魔術師】である補佐役が、
「オークの純血は“暴食”なので、今も昔も自国で備蓄できる食材に不安があります。」
「そのため、〝手つかずの動植物が多い他国を制圧しよう〟との考えに至った模様です。」
と、補足した。
「鳥族も同じ理由か?」
と俺が新たに疑問を呈したところ、オーク族の姫が、
「いえ、エルフの国には“不老長寿の泉”が存在しているとかで…、それが狙いのようです。」
と、述べたのである。
「そうなのか?!」
とエルフ&ハーフエルフの4人組に聞いてみたら、冒険パーティーのリーダーが、
「いいえ、そのような泉はありません。」
と、返し、その弟が、
「古来より実しやかに囁かれている、ただの迷信でございます。」
と続いたのだ。
「ふ…む。いずれにせよ、〝土地を得たい連中と、泉を欲する奴ら〟という訳か。」
と、理解する俺だった。
翌日、朝食を済ませた俺たちは、城の庭園に集まっていた。
都の中央に王城が聳え立っており、その内部には四千ぐらいを収容できる“中庭”があるのだそうで、領主補佐役から、そこに【瞬間転移】する提案を受けたのだ。
それであれば、バトルに充分なスペースを確保できそうではあるが…。
「いいのか?戦ってる最中に王城の幾らかが壊れるかもしれないけど?」
と確認する俺に、北方領主が、
「あそこには、辛い思い出しかないので、構いません。」
と、少し俯いて、悲し気な表情になったのだ。
それを踏まえた上で承知した俺が、
「これより敵の本拠地に攻め込むが…、全員、覚悟はいいなッ!?」
と確認したところ、
「はッ!!」
「御意!!」
「はい!!」
と、各々に力強く頷いたのであった。
領主補佐役によって“転移”するなり、俺は、王都ごと【絶対服従】したのである。
そして、【咆哮】を使用した。
[兎の王]の時みたいに。
およそ3分が経ち、二体の“豚の獣人”が、割とデカい階段を、
ドスンッ!
ドスンッ!
と下りてきたのである。
そのうちの1体は身長が4.5Mくらいで、ダークグリーンを基調とした“ウィザードローブ”を纏っていた。
もう1体は、背丈が5M程で、銀の甲冑や大楯と大剣に、黒のマントを、装備している。
見るからに【騎士】であるソイツが、[豚の王]に違いなかった―。