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とある生徒会長たちの密会

挿絵(By みてみん)

●森屋帝一



 アーティ高等学校、生徒会長室。

放課後、生徒会の仕事も愚昧灰荘の仕事も終えた僕は数独(ナンプレ)をしながら休息。

家でも出来ることだが穂花の相手をしてたら忙しくてそれどころじゃない。


近くのコンビニで買った『ナンプレ〔難問地獄級〕きっとアナタは諦める』。

タイトルで興味を持ったのだが、1問1分くらいで解けて期待外れもいいところだ。

手首の運動をしている気分である。


コンコンッ。


眠気に襲われそうになった瞬間、扉がノックされた。

ただ聴き慣れない音、鳩山先生でも海兎でもないのは確かだ。

まるで貴族のご令嬢のように気品のある……。



「失礼いたしますわ」



現れたのはクラスメイトの宇多川(うたがわ)

短い金髪、女の子のように整った顔、女生徒と男生徒のどちらともに人気がある線の細い美少年。

ただいつもの天使ではなく、紅茶好きの悪魔の方。

僕に用があったようで今日だけ入れ替わっていたらしい。

授業中バレないか何度ヒヤヒヤしたことか。


「久しぶりだな。アイリ」


「ええ、会いたかったですわ帝一さん。それにしても殿方の制服を着ると違和感があって仕方ないですわね」


ホムズ女学園生徒会長・宇多川愛梨。

扇子をパタパタさせている。

プライドが高くて威圧的。


『男性服に違和感』と言われて首を傾げてしまいそうになった。

3番弟子・アドリエッタの別人格である彼女の身体は男であるが人格は女だから反応に困る。


「こちら、うちの弟と探偵さんの推理ゲームの映像でしてよ」


わざわざDVDに録画してくれたようで、鞄からケースを取り出して渡してくれた。

僕は感謝を込めてにっこりと微笑み、


「一緒に観よう」


備品のDVDレコーダーを取り出して机に置き、椅子をふたつ用意する。

苦笑いのアイリ。


「……カフェ・グレコで他の弟子達と見ていただいてもよろしくてよ?生徒会長室じゃ目撃者を作ってしまう可能性が」


「僕といるのが嫌か?だったら強制はしないが」


「嫌なわけないですわっ!貴方が側にいろと言うならばなにを捨てようと構いませんわ」


そこまで言っていない。


「で、ですが早く帰らないと、妹さんが怪しむんじゃなくて?」


「それなら心配はいらない。あの探偵も帰りは遅くなるそうだ……猫捜しをしているらしい」


メールにそんなことが書いてあった。

まったく意味が分からなかったが【傲慢な女性にからまれてしまいました。今日はやけ食いの気分です】とのこと。

帰りにスーパーに寄って沢山具材を買おう。

お兄ちゃん頑張っちゃうぞ。


(ワタクシ)も愛を深めたいと思うのですが……残念です。用事があるのですわ」


「そうか。仕方ないな」


相手は安心したように肩から力が抜ける。

上品に頭を下げてから去って、



「僕も残念だ。君との話に夢中になれば映像内の()()()にも気付かないかもしれないのに」



ぴくりっと止まりスマホを手に取るアイリ。


「もしもし、セバスチャン……あの件ですが。なに?キャンセルになった。分かったですわ」


電話を切る振りをして今は無い金髪ロールをバサっとひるがえす。


「さあ、一緒に鑑賞しましょ」


「セバスチャンってのは?」


「父ですわ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



地下ライブハウス【セイレーン】にて3番弟子アドリエッタとの推理ゲームを行われた。

ミスリードにジャーナリスト浅倉美玖を使ったのは面白い。

良い攻め方をしていると思うが推理小説家の敗北。


『神様には全部お見通しなんだよっ‼︎』


ガシャンッと机を力強く叩くアドリエッタ。

ここだな。


「どうして映像を差し替えた?」


「……なんのことですわ?」


違和感が無いくらい丁寧に映像編集されているが、僕を騙そうなんて無駄なこと。


「嘘を吐くのが下手だな君は。次のカットで机の位置が少しだけ変わっている、あとは頭を抑えている探偵とジャーナリストの視線でなにが起きたかは少なからず推測が出来る」


「……」


アイリのおでこから汗。

僕は胸ポケットからハンカチを出してそれを拭く。


ゴクリッと息を飲むほど緊張させてしまったようだから安心させるために微笑んだ。


「家のお風呂に高級ヘアトリートメントが置かれていたんだ。穂花に聞いたんだが誰がくれたのか分からないらしくてな……誰だろうか。そんな親切な人がいるなら感謝をしたいところだ」


穂花曰く『登校したら自分の机の上にヘアトリートメントが置かれていて【穂花さんへ】とだけ書かれているメモが貼ってあった』。その筆跡に思い当たる人物がひとり。


「さあ?変わった方がいるのですわね」


まだ嘘を突き通せると思っている。

ぽんっと肩に手を置き、優しい眼差しで情に訴えるとしよう。


「僕は怒らないさ。例えアドリエッタが穂花の髪を引っ張ろうと今回だけは大目に見よう。だけどこれ以上誤魔化すようなら」


「ご、ごめんなさいですのっ!」


涙目になって謝るアイリ。

ハンカチで目元をポンポンしてから再び映像に視界を向ける。


「……凛のことを信じ過ぎていた私の責任ですわね」


「穂花が挑発したせいでもあるから気にするな。それに言ったろ?君との会話が楽しくて不審点を見逃してしまった」


「二重人格、ですわね」


「はは、それは君だろ」


映像が終わりDVDを取り出してケースに戻す。


一緒に観ていなかったら反省文を1万文字書いてもらうような案件だが、約束は約束だ。

これを1問やってもらったら帰らせよう。


「これは?」


「なに、ちょっとした脳トレだ」


『ナンプレ〔難問地獄級〕きっとアナタは諦める』を差し出す。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そろそろ下校時間7時になる。

だというのにペンは動かず数独は全く解かれていない。


「分かりません。こんなの出来るわけがないですわ!」


「推理小説と要領は同じだから頑張れ」


「そんなこと言われたって推理小説は凛が書いているのですから私にはさっぱりですわ!」


としても、ちょっとした仕返しだから苦しんでもらわんと割りに合わんのだ。

悩め、悩め。くはははっ。


まあ、そろそろ下校のチャイムが鳴ってしまうから手伝ってやろうかな。


「ここと、ここに3があるってことはこっちの正方形のどこに3が入るか分かるはずだ」


「なるほど。あ、それでしたらここには5が入るですわね」


他に教えてやろうと右手を伸ばした、


「「……」」


アイリの左手と重なってしまう。

まるで図書館でのイベントみたいで気恥ずかしくなって少し離れる。



「……こんな時間に男女ふたりっきりで個室にいるのになにも起きないはずなかったですわね」



右手で赤らめた顔を隠すアイリ。

なぜだかドキッとしてしまうが気のせいだ。


天使の宇多川ならまだしもこっちはシャレにならない。

しかも女装ではなく男装。


別人格、だが男だ。


「なにも起きないから安心しろ」


すっすはー、深呼吸して落ち着ちつかせなければ。

変な空気に飲まれちゃならない。


「このナンプレをさせるのも私と一緒にいたいからじゃなくて?あら可愛い」


「冗談は人格だけにしてくれ」


「出会った頃から私にだけ当たりが強いように思ってましたがあれですわね⁉︎好きな女の子をいじめちゃう系ですわ!」


違う、的外れも良いところよ。


興奮してすり寄ってくるアイリを押しのけてナンプレをちゃちゃっと完成させてしまう。


キーンコーンカーンコーン

それと同時に下校チャイムが鳴った。


「帰るぞ」


「……いけず、ですわね」


ムスッとするアイリを連れて生徒会長室を出る。

鍵をかけるのを忘れずにガチャリッと。


ふと思ったがホムズ女学園の生徒会は今日大丈夫だったのだろうか。

のほほんとしている宇多川がバレずに出来たか心配だ。


「遅くなったし家まで送ってく」


「殿方として当然。ですがなんだかカップルみたいですわね。お嫁さん候補に立候補してもよろしくて?」


「お黙り」


扇子で口を隠して笑うアイリ。

本当に僕の3番弟子たちは扱いに困る。

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