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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~国王の自戒~

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ドクター・ベリル 4

 ふふと少女のように笑う。本人の演技かもともとかもしれないが、エリザ・バジーにはネロリアの影響が出ているように見えた。認識力と判断力の低下。一種の妄想病だ。ジェゼロの血であったとしても、破壊したときに相当量の薬に暴露したはずだ。無害ではいられない。ジェゼロの血があるからこそ、この程度で済んでいるともいえる。

「だって、私が神に捧げた子は死んでしまったから」

「第一子を、神に捧げる。それが三公爵の決まりだったんだね」

 ロミアが残念そうに言う。ジェゼロの血は強い。だからこそ、あの地下の装置とは合わず結果死んだのだろう。ダイア・アカバの子もあそこで生贄にされていた。

「そうよ。だから私はもう子供を作らなかったの。子供を犠牲にするような悪習は途絶えさせるべきだと。でも、この子がいたから。よりよい世界を作ってあげないと」

 そういいながら、エリザが横の女の子を抱き寄せた。

「……ママはどうして北の施設を閉鎖したの?」

 ネロリアの影響で紫に近い瞳の色に変わった双方が見上げて問う。

「カンラ?」

「どうして、王様の子供を誘拐しようとしたの?」

「あなた何を言っているの」

「どうして、私の本当のママを殺したの」

 立ち上がり、涙をあふれさせて言う。

「どうしてっ、あなたの故郷がジェゼロの王の家系の村だってアカバに教えたのっ」

「いい加減になさいっ」

 ぱんと頬を叩かれた子供はロミアの許へ駆け寄った。なにが傍観者だ。しっかりと裏で姑息に動いていたのではないか。

「この子は旦那さんの愛人の子だね」

 ロミアが静かに言う。

「家を保つために、あそこへこの子を、バジーの血を持つ子を取りに行って、予言を知ったんだ。そして、それを独り占めにして、邪魔な他の二つの公爵を消そうとした。最後に残ったあなたが、あなたの小さな予言者を利用してこの国を支配するはずだったんでしょ」

 声を殺して泣く子供をあやしながらロミアが言う。

「その子は捨て子です。私が拾って育てただけの事。空想が少し好きなだけですよ」

 エリザが誤魔化す様に笑って見せる。

 エラが死ななかったのは偶然ではない。ロミアがエリザを使って城を制圧し、あの場へ向かったからだ。その手際がなければエラは死んでいた。そして制御の利かない帝王が無慈悲な制裁を下していた。それらを回避したのは、旧時代の技術だ。エラ達の身に被害が加わる前に助ければ、場所が特定できなかったから危険を承知で泳がせたのか。それともあれが精いっぱいの事だったのか。

「残念だけどこの子はもう予言者じゃないよ。善悪を知ってる」

 ネロリアの正しい作用を得た子供を抱きしめながら、ロミアは言った。



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