ドクター・ベリル 3
「もう、カンラに聞いてるでしょ?」
ロミアがにこりと笑う。
「さあ、どこまでかしら」
後ろからついてきたのはもふもふした髪の子供だ。
「……なるほどな」
この子かとため息が出た。
「帝王が機嫌を損ねて、この国を焼け野原にしないためにも、情報を隠すのは得策じゃない。騙せると思うなら辞めた方がいい」
許可も求めずにソファに腰掛けると横に座った少女の頭を撫でた。
「私がしたことは二つ。子供を取り戻そうとしたこと、それに、私のような犠牲を出さないようにしたこと。それだけです」
「あそこはそれぞれの公爵家が知る秘密を合わせて初めて行ける場だ」
入口をアカバが、モニター室へ入るためにはイセ家が。そして、中に生贄を捧げるための部屋へ入る為にバジー家があった。
「それは正しくはありません。アカバとイセは以前からバジーを交えず中へ入っていました。予言を盗み見るために。ですがクロト・イセの父親はダイアに加担することを拒否し、クロトが王位を継ぐまでは代々受け継いできた言葉を息子にも教えることもありませんでした。それ以前はよく神のお告げを盗み聞いていたんですよ。ただ、それよりも中に入るにはバジーの血統が必要でしたから、我が家は安泰でした」
「だがあなたはバジーの血を引いていない」
地下へ入る方法と暗証番号をどこかで手に入れたと言う事か。
問いにエリザ・バジーはまっすぐにこちらを見た。
「私の曽祖母の名はリナ・ハンミーといいます。ローヴィニエの商人に見初められ、愛人として暮らしていました。その娘は正式に養子に迎えられ、爵位の高い男に嫁がされ、その間にできた娘も献上品のように嫁がされました。そんな事を繰り返して、私はローヴィニエの王を輩出するバジー公爵家へ嫁ぐこととなりました。男が成りあがるのに利用されてきた家系です。ですが、私たちは一つの誇りを持って生きてまいりました。代々秘密の名を継いできたのです。私の本当の名前はエリザ・ジェゼロといいます」
エリザは自分を真の王だとでもいうように、自信と権威に満ちた顔で言う。
エリザ・バジーを調べればエラ・ジェゼロと同じ特殊なミトコンドリア型が得られるということか。それにため息がでる。女人家系がこんな場に流失していたのかと、まことしやかには信じられないが、結果は事実と示している。ジェゼロ王に認められる条件がそろえば、この国の機密の場へパスワードを知らずとも血によって入ることが可能だ。
「でも、コモさんに養子に入っていただきたいのも事実ですわ。彼はとても優しくて愉快な方ですから。バジーの名は受け継いでいただきたかったの」




