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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~公国の秘密~

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ローヴィニエの秘密 1


   十五



 後ろ手に拘束され、足は半歩ほどしか余裕のない鎖で繋がれている。腕の固定はきっちりとされていて外せない。首には犬のように首輪を嵌められた。内には突起が付いていて、強く引かれればかなり痛い代物だ。もしも縄の先をエラ様が持っていれば、まあ、それはそれで悪くはないのだが、他の者ではいい気がしない。エラ様の首にも首輪を嵌められている状態には反吐が出る。

「……」

 いまだに轡を噛まされているので自分がエラ様に何か言えるわけではないが、エラ様は自分よりはまだ自由のある拘束だ。手は体の前で拘束され、うまく結ばせているので必要があれば抜けられる。ハザキから有事の際に縄抜けは教えられている。結ばせるときにコツがいるのだ。それに足は固定されていない。ただ、いつもは履かれないヒールの高い編み込みのブーツで、走るには困難だ。口は塞がれていないが、勝手をした自分にかける言葉はないらしく真一文字に閉ざしている。

「ほら、早く歩け」

 縄を引かれ、よろける。足裁きが狭く歩くのすら困難だ。

「随分と歩きづらそうですね。手をお貸ししましょうか?」

 ダイア・アカバが笑いながらエラ様に言う。どこへ連れていくのか、夜中を過ぎたころに城から出て歩かされている。

 自分のこれまでの人生で、ナサナの牢に入れられ、ジェーム帝国では誘拐犯として捕まった。これまでで一番辛い経験はエラ様に愛想を尽かされ事だが、それ以外でもいろいろと経験をしてきた。今が最悪だと思うのはエラ様に危害が及んでいるせいだろう。自分は痛みにも強い皮が剥がれるまで鞭打たれても耐えられる。だが、エラ様の美しい頬についた赤い筋を見て自分の無能さに腹が立っている。

 広すぎる庭を抜け城壁が見える傍まで来ると、木々の間から建物が見えた。月は出ているが満月ではない。兵が照らすランプの明かりは屑達のもので、大して明かりのない自分は何度も木の根に足を取られその度に強かに体を打った。挙句首輪を引かれるのでたまったものではない。はじめは本当に足を取られたが、その後はわざとコケることもあった。そうすればダイア・アカバも足を止める。足を痛めているのか靴の問題だけかエラ様が歩きづらいことだけは確かで、少しでも足を休ませて頂くための愚策だ。

「最初の威勢はどうしたんだ。早く立てっ」

 クロト・イセが喜々として罵る。よろけこける様は弱っている姿に見えるのだろう。この場合は演出としては悪くない。

 エラ様はお優しいがご自身に対しては頑なだ。自分がいることで反撃することができない。今の自分はエラ様の枷であり、守られている状態だ。まったく情けない話だ。

 見えていた建物は教会だった。そこがやはり目的だったのか、教会の入り口まで来てようやく足を止めた。兵に門を開けさせると、中へ引っ張られる。


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