気色の悪い性癖 前
少し部屋を離れた間にクロトがまた悪い悪戯をした。水の放出音は城内にもわずかに響くから気付けたが、もしも侵入者がいなければエラ・ジェゼロのオーブン焼きができていた。何人使っても、火加減を理解しない。そして間違えたといいながら学習しない。別のものならいいが、エラでそれをされては困る。
大量に汗をかかされたエラに、水が飲みたければそれなりの態度を示すように促したが、無視をされた。かなり疲弊した状況でも王であることを主張する。変わることなく王であり続けられるなら、そうなれるものなのか。
わざわざ下に降りてあげた。下に下した鳥かごの前に×型の木枠を設置させる。エラを嬲るためではない。条件がわからない以上。今はまだ彼女に直接傷をつけてはならない。
勇敢であり無謀にも単身助けに来た男を連れてこさせ、木枠に向かい合うように両手足を両端に固定させる。男を見た時にエラ・ジェゼロの顔に一瞬だけ動揺が出たのを見逃してはいない。
侍女が宝箱を持って近づく。それを開けて中から長い革の手袋を取り出して嵌める。それから、長い軽い鞭を選んだ。
手始めに床を打ち付ける。水で一度流したおかげで煤はだいぶと取れたが後で掃除をさせなくてはならない。それに、貴重な虎を焼き殺すとは、クロトには後で教育が必要だ。
長く細い鞭は音の速度を超えるらしい。振るった後に響く音がとても好きだった。
指示するとエラの騎士の服にはさみが入る。傷つけないように縦に割かれたそれが横によけられ、立派な広背筋を露わにさせる。美術品としてはく製にしたいが残念だ。
もう一度床を叩いて調子を見てからそれを縦に振るいその背中で音を楽しむ。赤い筋とわずかに血が滲む。男が余計なことを言わないように轡を嵌めているがふつうは呻き声くらい漏らすものだ。だが、ほとんど動きもしない。飼い主も辞めてくれと懇願すると思ったのに、怒りの形相こそ見せているが、口を開かない。
「これは、あなたにとってはどうでもいい男だったのかしら? 期待が外れたわね」
「服の趣味だけじゃなく、性癖も気色が悪いな」
それまでよりも明らかに鋭い視線でエラが言う。
「あなたの対応次第で、彼の今後は変わるわ。顔は好みだから、私の玩具にしたいのだけど。あなたのものじゃないなら、私の物にしてもいいでしょう」
畳んで持った鞭を打ち合わせて鳴らす。あまり深く皮膚を抉っては後の管理が面倒だ思ったが、もう少し痛みを与えた方がいい。




