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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~公国の秘密~
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潜入 前


 ローヴィニエ城に入ったことが確認された。城内地図も頭に入れたがアカバが王になってから改築された場所は不明なままだ。他で下された形跡はなくそこにエラ様がいる可能性が高い。

 帝国の間者はさすがに多い。自覚なく帝国へ情報を流しているものも数多いる。特別ローヴィニエを危険視していたわけではないだろう。唯一ジェゼロだけほとんど間者がいないと言っていい。

 一つ、有力な情報を手にしている。本来は明日、ローヴィニエの王が変わる日だということだ。ジェゼロの儀式のように三公爵が集まる。密室で行われ誰一人そこで何が行われるか知られていない。ジェゼロも神域に入れる日は決まっていた。それと同じであれば、エラ様はそれまでに殺される可能性が低い。

 帝国からの援軍はローヴィニエとの国境付近からでも数日はかかる。自分が国を出た時間を考慮しても明日までに着くことは難しいだろう。

 王が変わったことで多少なりとも城内は混乱している。イセ家の使用人も入り、全てがなじみの顔ではない。使用人の服は手に入れた。そして今、城内へ食品を卸す馬車に入り、内部に侵入に成功した。強行であること、無駄に終わる可能性、全て計ったところで無駄だ。ここにエラ様がいるならば助ける以外に考えはない。

 クロト・イセだけでなくダイア・アカバの噂もよくはない。

 城の中はナサナ国の作りに近いが、少しくすんで見える。建物も老朽化が隠せていない。

 堂々と歩けば案外と怪しまれないものだ。ダイア・アカバが寝室に使っているだろう部屋へ向かう。エラ様の場所を探すよりも、根源を捕まえた方が早い。

 国に入る前にエラ様を見つけられれば一番だったが、何かがある明日になる前に着けただけでも良しとするしかない。

「おい」

 ジェーム帝国の手引きもあり城へ侵入ができた。占領を繰り返し巨大な国となったジェーム帝国は、ただ軍事力に優れているわけではない。その後の統治を含め、長く謀略を進め、国をのみ込むのだ。

 だが流石に王の部屋の前には兵が立っている。呼び止められ足を止めた。

「あの、お茶を届けるように命じられたのですが」

 侵入は厨房からだ。他にも手段はあったがここを選んだ。ダイア・アカバは定期的に男を呼びつけている。メイドの間では知れた噂話だ。だが外から男娼を呼べば体裁が悪い。見目のいい城内の男が声をかけられることが多い。それに新人が多いのも特徴だ。いや、そのために雇い入れていると言っていい。

「ああ、入れ」

 兵の男が苦笑いを漏らすとあっさりと通ることができた。

「あの……はじめてで」

 初々しくそっと聞く。

「部屋に入ったら侍女に確認を受けろ。奥の寝室に案内される。くれぐれも別の部屋には入るなよ。またここを通りたいならな」

 小さい声で忠告を受ける。兵の忠誠心は薄い。


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