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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~公国の秘密~

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懐かしい人


 うなされて目が覚めたカンラがこっちに気付く。他の子供と違って、カンラだけ個室が与えられていた。

「あなた、なんで知ってるの」

「昔々、君と同じ力で助けてもらった事があるんだ。まさか、まだいるとは思わなかったよ」

 素直に言うと目に恐怖が見えた。

「怖がらなくていいよ。僕は君に怖いことなんてしてないでしょう」

「でも、ママが信じちゃダメだって」

「……カンラが信じない方がいいって思うならそうした方がいいよ。誰かがじゃなくて、自分で決めていいんだよ。もちろん、誰かに相談して決めるのも自由だよ」

「全部ママが決めてくれるのに?」

 声を潜めてカンラが問う。

「その方がいいなら、決めてもらうって決めたらいいよ。大人の意見を取り入れることは悪いことじゃないからね。でも、いいんだよ。ふつうは誰でも失敗するからさ」

「失敗しない方法があるならその方がいいでしょう」

「僕は今までいろいろ失敗したけど、それが本当に失敗だったかって聞かれると、必要だったかもしれないって思うこともあるよ。巻き戻せるならやり直したいこともあるけど、でも、全部成功しなくってもいいんだよ」

 そうか、友達の友達に似ていると思ったけど、自分の大事な子にこの子は似てるのかとロミアは今更気づいた。そうなると少し困る。

「エリザはカンラにとって大切なのは知ってるよ。だけど、カンラはどうしたいかも大事だよ」

 どこでエリザはカンラを手に入れたんだろう。観察対象に思い入れを持ってしまったらしい。そうなると、ちゃんとした環境にいない事が心配になってしまう。



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