懐かしい人
うなされて目が覚めたカンラがこっちに気付く。他の子供と違って、カンラだけ個室が与えられていた。
「あなた、なんで知ってるの」
「昔々、君と同じ力で助けてもらった事があるんだ。まさか、まだいるとは思わなかったよ」
素直に言うと目に恐怖が見えた。
「怖がらなくていいよ。僕は君に怖いことなんてしてないでしょう」
「でも、ママが信じちゃダメだって」
「……カンラが信じない方がいいって思うならそうした方がいいよ。誰かがじゃなくて、自分で決めていいんだよ。もちろん、誰かに相談して決めるのも自由だよ」
「全部ママが決めてくれるのに?」
声を潜めてカンラが問う。
「その方がいいなら、決めてもらうって決めたらいいよ。大人の意見を取り入れることは悪いことじゃないからね。でも、いいんだよ。ふつうは誰でも失敗するからさ」
「失敗しない方法があるならその方がいいでしょう」
「僕は今までいろいろ失敗したけど、それが本当に失敗だったかって聞かれると、必要だったかもしれないって思うこともあるよ。巻き戻せるならやり直したいこともあるけど、でも、全部成功しなくってもいいんだよ」
そうか、友達の友達に似ていると思ったけど、自分の大事な子にこの子は似てるのかとロミアは今更気づいた。そうなると少し困る。
「エリザはカンラにとって大切なのは知ってるよ。だけど、カンラはどうしたいかも大事だよ」
どこでエリザはカンラを手に入れたんだろう。観察対象に思い入れを持ってしまったらしい。そうなると、ちゃんとした環境にいない事が心配になってしまう。




