不在
十三
リセはいつもと違う朝を迎えた。赤子の泣き声で目が覚めた。国王専属メイドの部屋でユマ様を一晩中見ていたのだ。
「いい子いい子。お腹が空いたの?」
抱き寄せると甘い匂いと臭いにおいが混じる。おむつか。
弓矢による襲撃後、エラ様は恐ろしく不機嫌だった。当たり前だ、またしてもご子息の命が危うかったのだ。議会院でもやはりローヴィニエが関係しているのではないかと話が出た。今日にもダイア・アカバに城まで来てもらうよう指示をしていたが長旅で倒れてしまい今日は無理だと伝えに行った兵が帰ってきた。兵が検問の宿場で寝込んでいる姿は確認してきている。
エラ様を呼びに行くが扉には少し調べ物をすると紙が貼られていた。王の寝室には特別な許可がなければドアが開かない。
「やはりショックだったのでしょう」
ハザキにため息交じりに言う。応接室の窓は鉄の板が張られ昼間だというのに薄暗い。
「ベンジャミンならばまだ資格があるかもしれん」
ハザキが立ち上がる。
「そうね。仕方ないわ。エラ様には叱られるでしょうけど。オオガミにも神域の中にいないか見てもらいます」
それに次いで立ち上がる。廊下に出るとちょうどリセ・ハンミーがいた。可愛そうに手には痛々しい包帯がまかれている。
「まだそちらのお部屋は使わない方がよろしいですか?」
「今安全策を講じているところだから、今日も泊まってもらうかもしれないわ。怪我をしたのにごめんなさいね」
「いえ」
ベンジャミンの国王付き解任と言い、エラ様は不安定になられている。サウラも産後に珍しく弱音を吐いていた。そういうものなのかもしれないが、たとえ疎まれても、理由を問い、何か策を講じないといけなかった。
この章にはややグロい表現が出ます。苦手な方はお気を付けください。
歪んだ趣味に走っているので衝突事故にお気を付けください。