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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~女王の計略~

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ずれた歯車


 覗き鏡がある部屋でルネト・ハンミーに面通しをさせた。はっきりと犯人だと言わしめさせるつもりだったが結果は違った。

 はっきりとあんなに若くなかったと言ったのだ。

「誘拐犯ではないと?」

 エラが不機嫌に問う。

「あの反応は本当だと思うが、また薬を使うか?」

 帝国産とサウラ特性自白剤のちゃんぽんはよく聞いたらしいが、効き過ぎたのが難点だったらしい。

「いや、それだけの地位のあるものが身分をさらしてこのような暴挙を命じるとは考えにくかった。実行犯を煮ようとも真の依頼主は出んだろう」

「別の二人もヒラソルから居場所をはかせられたおかげで確保はできたが供述はあっているからな」

 ハザキがリー・ヒラソルに尋問をしたが、利き手の指の骨を全て潰して吐かせた。二本目で事は済んでいたが、虚偽かもしれないと5本の指が全てあらぬ方向に向いた。その後の生活を考えた罰としてだろう。あれは残忍な行為を受ける相手に共感しない特技がある。でなければ外科医なんて無理だろう。薬の効力と副作用の確認でヒラソルは利用されている。そこでの言葉も同じだった。エラにはこっちでやると言っておいてよかった。ああいうものは王の役目じゃない。

 他国の旅芸人だという3人の死刑は免れるだろうがヒラソルは最良で幽閉だろう。王の食事に毒を仕込み、王の子の誘拐を手引きした。それだけで死刑でも十分だ。おまけに私欲のためとあっては優しいエラが何か言っても釈放はできない。

「私が本人に会うしかないだろう。そうすれば目的も見える」

 そう言うだろうとは思っていた。

「向こうは二人きりで会いたいとのことだ」

「私は構わん」

 以前ならベンジャミンをつけられたが、今のエラはしないだろう。なんだかんだで自分の姪で、サウラの子供だ。頑固者は家系だ。

「それと、ベンジャミンは返品されたと思っていいな?」

「好きにするといい」

 酷くそっけない。ベンジャミンのいたいけな反応を思うと女は飽きると早いと言うが、少しばかり恐ろしくすらある。

「碌に世話をできない飼い主に飼われるくらいなら、野良の方がまだ幸せかもしれないな」

 今のあれを見ていると哀れになる。飼い主に捨てられても一生懸命役立とうと見えぬ場で働いている。エラとベンジャミンどちらが可愛いかと言われればエラだ。どちらに愛着があるかと言えばベンジャミンになる。あれは息子や弟のような生き物だ。二人が幸せならばいいが、そうでないならば見ていて残念だ。

「本当は解任理由を聞いて欲しいんだろ?」

「必要ない。もう決めたことだ。これについては一存で決められることだろう」

 すっかり立派な王様になった。だが、そういう王にエラは向かない。

「お前のイヌッコロは捨てられたとわかっても主人を待つバカ犬だ」

「国政に不要な話はいらない。お前が見繕ってくれた手伝いは優秀だ。書類仕事も予定の調整も十分にこなしてくれている。心配せずとも、同じようにあれにも代わりの飼い主がその穴を埋めてくれるだろう」

 エラが既に切れていることは理解した。だからジェゼロ王は夫をもてないというのだ。



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