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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~騎士の帰国~
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帝国からの帰国者と、

人物紹介2


コモ・バジー:エユ・バジーの親戚。ジェゼロの歴史学者。オオガミとハザキとは同世代。

ロミア:オオガミの師匠など。


トワス・コナー:よく名前を忘れる。議会員の青年。

左と右:ナサナ出身の双子。ジェゼロに移り住んで服屋などを営んでいる。城の服も作成している。


エリザ・バジー:ローヴィニエ公国のバジー家に嫁いだ女性。


   2


 宿屋の食事処で捕まった。

「コモ様。どうかお戻りになっていただけませんか」

 子爵か侯爵か男爵の男が立ったまま深々と頭を下げられる。巻けたと思ったのに失敗した。

「残念ですが、ジェゼロで生まれジェゼロで死ぬまで暮らす予定なので。エリザ婦人との別れも済んでいますから」

「ローヴィニエに来ていただければ、ジェゼロよりも良い暮らしを保証いたします。見目麗しい女性も、甘美な食も、優美な住まいもすべて整えさせていただきますので」

「んー」

 そこに足りないものがある。ジェゼロの歴史は現在進行形で作られる。ジェゼロの歴史はその国にはないのだ。多分言っても理解してくれないんだろう。昔からちょっと変わっている癖だから今更理解を求めはしないから、こうもしつこく来ないで欲しい。

「何してんだコモ」

 後ろから声をかけられて振り返ると大男が立っていた。大きいのは身長で横が太いわけではない。その男をよく知っている。自分の旧友だ。

「トーマくん。どうして君がここにいるんだい」

 ぱっと立ち上がると後ろから女の子いや男の子?がひょっこりと顔を出した。

「だーれ?」

 その性別が判断できない子がトウマ・ジェゼロへ聞く。

「ああ、旧友です。頭のイカレタ」

「ふーん。それでトウマ君って呼んでも怒らないんだね」

 トウマが敬語で話していると一人驚く。彼は世捨て人となった王族だ。歴史の一つとしてとても興味深い人物でもある。誰よりも聡明で完璧だった少年が青年になると同時に街を出て王族を辞めて、常識人も止めてしまったのだ。

「あ、今はオオガミくんって呼んだ方がいい?」

「お前はもうどっちでもいい。それより、お前……ああ、エラが帰ってきたときにジェゼロにいなかったな」

 暢気にそんなことを言う。

「ああ、やっぱり噂は本当なんだね。エラ様が国王に戻られた瞬間に立ち会えなかったなんて……コモ・バジー一生の不覚だよ」

 ジェゼロ国の大事だ。歴史が動く瞬間を見逃したなんて、旅に出たのは失敗だった。

「まさかとは思うが、エラを追って旅にでも出たのか?」

「流石に賢いね。でも野盗に襲われて一文無しになったところを旅一座に拾ってもらい、その後ローヴィニエに入って旧家を頼って世話をしてもらった後、ジェゼロに帰るところだとはわからないでしょう」

「……トウマ君。彼大分と面白いね」

 はあと頭を抱えるトウマの横にいる子が言う。

「じゃあついでに連れて帰ってあげなよ。僕はここらで社会見学しながら戻るからさ」

「言っても止めないでしょうから、気を付けてくださいよ。くれぐれも、シィヴィラのあほみたいなことにはならないように」

「気を付けるよー」

 軽い調子で乗れる船が決まったらしい。トウマ・ジェゼロの船なら大船に乗ったつもりでジェゼロまで行ける。少なくとも野盗には襲われまい。

「コモ様。こちらの話が終わっていません」

 後ろから貴族が声を張って言う。それにトウマが睨むように見下した。

「ジェゼロの民はジェゼロの庇護下にある。意志に反して連れて行くつもりなら、覚悟をしてからにしろ」

 言い知れなら威圧感。これが選ばれて産まれたものの持つものなのか。男は一度唾を飲み込み、それでも口を開いた。

「コモ様、我々はまだ諦めてはおりません。望むものはすべて用意いたします。お心変わりがあれば書を。直ぐに馳せ参じます」

 紙切れを押し付けると踵を返して立ち去った。

「いやー、流石は王子様。怖いねー」

「うるせー。ジェゼロの者は国のもんなんだよ。国王以外が好きにするのは許せない」

 トウマくんと会えたのは幸運だった。

「あれ。連れの子は?」

 ふと、大きなトウマの後ろに誰もいない事に気づく。

「……はぁ、師匠は相変わらず勝手だなぁ」

 あの自由気ままなトウマが人を勝手だと言うだなんて。



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