貴族の証言
エラ様が危惧していたことが当たった。もし首を刎ねられたのが事実ならば、身代わりになった者をハザキは哀れに思う。自分もエラ様を逃がした時に代わりにそうなっていたかもしれない。そう思うと余計に哀れに思う。自分はあの場で死んでも後悔はしなかったろうが、果たしてアカバの影武者はどうだったのか。
「私が知る限りの本人です」
バジー派閥の貴族が青い顔で言う。特別な部屋でそのダイア・アカバを待たせている間、確認を行っていた。
「そちらの見解を窺いたい。ダイア殿はどのような人物で、なぜここへ?」
「……ダイア様は、目的のためならば強行な姿勢も厭いません。地整のための退去を受け入れなかった家が次の日には家族ごと火事で消えていたことが一度ありました。ですが、一度だけだったため大きな問題にはならず、その後立ち退きなどに応じない国民はほとんどいなくなりました。他にも疑惑はありますが、目的のためならば犠牲を強いる方です。ここに来た目的は必ずあるはずです。それで何が犠牲になったとしても、この方はやり遂げます」
バジー家についているのは代々の忠誠もあるだろうが、それ以前の問題もあるようだ。
「王位を奪ったイセ公爵家のクロト氏はどのような方で」
問いに唾をのみ、ダイア・アカバの時よりも間が空いた。
「ご本人に会ったことはありません。病に冒され療養をされていましたので。先日成人したばかりの若い方です。ただ……これはあくまでも噂でしかありません。静養場所の女中は身分の低いものが選ばれていたと。本来ならば身元の確かなものだけが公爵家には雇われます。いつの間にか、仕事に来なくなるものが定期的に出ると……事実かはわかりませんが、エリザ様の許へ、その家族と言うものが嘆願しにきたのを見たことがあるのです」
一度間を置き、男はこちらを見た。
「ジェゼロでなくてもいい。ナサナでも帝国でも構いません。場合によっては家族と共に亡命を」
それほどまでに嫌な相手と言うことか。
「貴公がコモをよこせと言う一番の理由は、対等な立場の盾を欲していたということですな」
半年後には規定でそのイセ家が権限を握る予定だった。となれば、遅かれ早かれ、混乱が予見されていたということだ。
「まだダイア様の方が、国は安定します。ローヴィニエは三つの公爵があって初めて成り立つ国。必要であれば、私はダイア様にも忠誠を誓わなければなりません」
ジェゼロには国王以外に血による権力者はいない。バジー家は国に帰ればそれなりの身分だと知れているので尊敬はされているがそれらは先人が知識人であったことにも由来する。議会院も同様に身分や職に関係なくつける名誉職だ。
「援助については国王陛下がお決めになること。わざわざアカバ殿が来られるのは、何かジェゼロと縁がおありだったか?」
「……ローヴィニエにとってもこの国は聖地です。国が乱れたとき、ここへ祈れば雲は晴れると伝えがあります」
ハザキは地下に眠る正体もそれが求めたものも今では知っている。ローヴィニエも古い国だ。つまり、旧人類が作ったものだ。ならば我が国の神ならば何かできると考えても不思議はない。
良くも悪くもジェゼロは聖地と知られている。攻め入る国があれば他国が許さない。正当な戦争の理由にできれば複数でその国の領地を奪うことができる。エラ様は無償でその恩恵だけを受けることはできないようだ。




