ローヴィニエについて 後
「帝国は把握しているようだな」
今は帝国の新技術を黙っていた事は置いておく。それよりもロミアの方が問題だ。ジェゼロの神は今はこの地にいない。ロミアがそうであると知る者は極わずかにとどめている。ロミア自身が外に出ている間は神として扱われたくないと言う要望もあってのことだ。
それでも、もしもの事があれば大事だ。
「ずっと帝国軍が付いてきていたからな。二手に分かれた時にもロミアの方へ手練れは付いていったから、居場所ともしもの場合は対応してくれるだろう」
こうなると、先に帰ってきたベンジャミンも問題だ。いや、それについて初めに咎めなかったのだ今更言うことではないだろう。
「他国に対してあまり口を出す立場ではない。ただロミアに何かあれば別だ。それに、王座を奪われた女王には誘拐指示の疑惑がある」
「その女王も首を切られちゃ生きてねーだろ。因果応報かね」
自分も王座を追われると言う立場を味わったことがある。だからこそ、他人が代わりに鉄槌を下したと安易に思えない。
「あまりにも簡単すぎる。ただ期限だと王座を奪うだけならばまだ理解できるが、同じ公爵の人間を殺しては大儀にならない。なんといえばいいか、嫌な予感がする」
ユマを何かに利用したかったにしろ、計略が好きな王であったことは間違いないだろう。だから、他の公爵の謀りにあっさり巻かれるとは思えない。
「ひとまずは静観でよろしいですか? クロト・イセからはまだ特に何か書は届いておりませんし、元々ローヴィニエとは密接な関係もありませんでしたから」
エユの言葉に頷く。
「帝国へロミアの状況の報告を依頼して、可能なら連れてきてもらってくれ。コモが行く気がない貴族殿たちにも帰っていただくといい」
どうして他国のいざこざに巻き込まれなければならないのか。わざわざ崩御を知らせたのはロミアがいるから対応の確認をわざわざしてくれたのだ。
話を終えてエユだけが執務室に残っていた。
「エラ様、少しよろしいですか?」
「ああ」
話の予想は付く。
「ベンジャミンを外す件ですが、閨についても同様でしょうか。もし、決めた相手がいるのでしたら、先に手を打たせていただきます。無論内々に」
「……」
外すことの理由と考え直せと言われると思っていた。いや、エユは元々反対していたのだ。これは好機だと思ったのだろう。
「……ユマの出産で随分執務が遅れた。体調を考えても数年は閨を取るつもりはない」
「では、別に特定の殿方がいないのですね?」
「ああ」
「まだお若いので、急ぐ必要はありません。出過ぎた事をお聞きしました」
議会院長は閨の管理もする。だから仕方ない事だ。王の最大の責務は次の王を設ける事だ。無理を言って闇閨という異例を通した。それを手放したのだ。今後、どうするかは気にかけて当たり前だ。
「では、ベンジャミンの私生活に気を配る必要はありませんね」
「ああ……」
言ってから唾を飲んだ。ユマは王にならない。
「……エラ様必要があれば苦手ではありますが子守りも手伝います。私は母にはなりませんでしたが、エラ様を娘だと思っています」
「………大丈夫だ。心配しなくても最近はユマの夜泣きもマシになってくれた」
自分も母に向かないと自覚している。普通の母親は子守りも雇わずよくやっている。自分では到底無理だ。
「閨の事も決めたら知らせる」
「……承知しました」