カンラ
割かと面白そうだからそのまま孤児施設で過ごしてみた。いくつかのハウスで暮らす子供たちとそこに母親役が一人いる。中々面白い。職業学校に通う子供たちもいて、自分もそこに何故か通わされている。女の子として入ってみた結果料理とお裁縫の学校に入れられた。この時代も女性の最大の就職先は嫁らしい。それにお針子やごはん屋さんでの職も少なくはないようだ。はじめは虐待とかがあるんじゃないかと見ていたが、ここはとても健全に見えた。
現代の庶民の生活は大分見られたからそろそろジェゼロに帰らないとエラたちが心配する。荷物を軽くまとめて部屋を出ると女の子が一人立っていた。
「あなた、今日は学校に行かないほうがいいわ」
話しかけてきたのはくりくりパーマの女の子。ここに着た時にエリザをママと呼んだ女の子だ。
「どうして?」
ここに残ったのはこの子が知り合いに似ていたからでもある。それもずいぶん昔の知り合いだ。それに、この土地から一つ持って帰りたいものもあった。ただ、場所がわからない。仕方ないから一回帰って正式に訪問しようと考えていた。だけど、あの日以来ずっと見つけられなかったこの子から来てくれたと言うことは、やっぱりこの子は知り合いと似ているのかもしれない。
「あなたの目、不思議な色」
「そう? 緑色はたまにいるよ。君の方がずっと珍しい色だよ。君の名前は何?」
「……カンラ」
「僕はロミアだよ」
「あなたは女の子じゃないの?」
「んー。どっちでもあってどっちでもないかな。君は女の子?」
「そうよ。見てわからないの?」
十歳くらいだろうか。子供らしくそんなことを聞く意味が解らないと言う顔だ。
「カンラは僕を助けてくれたのかな。それとも、ここに引き留めたかっただけ?」
「あなた、やっぱりちょっと変よ」
「みんなちょっと変なもんだよ」
紫に近い青い瞳にそばかすの多い顔。可愛いけど美人ではない。カンラはじっと見た後渋い顔をした。
「変な人」
「ねえ、今日出かけないんなら暇になっちゃった。僕と遊んであげてよ」