クロト・イセ
ややグロい表現が含まれています。
苦手な方はご注意ください。
十二時の鐘が鳴る。町が妙にうるさくてかなわない。
「クロト陛下、行かずともよろしかったのですか?」
昼の十二時なんて時間に起こされて目が痛い。カーテンから漏れる光だけでも頭が割れそうだった。
「早く地下に部屋を用意してくれ。まぶしくてかなわない」
「その、地下はワイン庫か牢になっておりまして」
「どちらでもかまわない。明日の日の出までに用意ができないならば、関わった者は全員処刑する」
なんと気が長いのだろうと感心する。皆わかっていない。太陽がどれほど危険なのか。
「承知しました」
昨日、カーテンを開けた女中は相応の罰を与えた。今回の女中はまだましだといい。何も好きで罰を与えているわけではないのだ。
暖炉の火に液体が落ち木々のはぜる音と異臭が舞う。それにため息が出た。誰かが水をかけたわけではない。
「火をくべ直せ。まったく、罰の意味を分かっていない」
煙突の中につるした前の女中が漏らしたのだ。躾がなっていない以前に自分が犯した罪の意味を理解していない。だから火を消そうなどとしたのだ。太陽の光に比べれば、暖炉の灯火など些細なのものだ。
「アカバの死体は頭だけでいい。日が落ちたら起こせ」
「かしこまりました」
寝室へ向かう。ここよりも日が入らない。昼に処刑などせず夜中にしてくれればよいものを。
「バジー家は?」
「エリザ・バジー様より新王に対する祝いの書が届いています」
「反対するなら首を斬れたと言うのに」
残りかすの婆だがアカバ家とバジー家の一派両方を敵に回すのはまだ早い。それに約束もある。言いつけ通りにできるいい子だと、褒めてもらわなければならない。