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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~女王の計略~

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エユ・バジーの危惧


 常々、ベンジャミン・ハウスを国王付きから外したいと考えているのは自分だけではなかっただろう。

 エユはそもそも反対だった。今も、賛成はしない。だが、実際にそれを外したエラ様を心配している自分がいる。それに、ベンジャミンの事も。既に解任するには遅すぎた。

 エラ様から、ベンジャミンを国王付きから解任したいと言われた時、思わず止めてしまった。だがあまりにもエラ様の決意が固い。ハザキとオオガミを呼び出し、相談した結果、しばらくエラ様と直接かかわる仕事から外すと言うことで落ち着いた。対外的には安全管理や他に重要事があるからという適当な理由をつけ、国王付き解任は伏せる事を陛下に了承いただいた。国王付き不在を知られたくないことと言い訳をして何とか説き伏せた。実際はベンジャミンの兵への影響力を考えハザキが反対したのもある。エラ様の政務補佐はオオガミが連れてきた市政の職員が付いている。

 ユマ様はリセ・ハンミーが引き続き子守りとして残った。手伝いではなく正式に城での正規雇用に切り替えまでした。双子の姉妹はエラ様のお役に立つならとすんなり手放してくれた。

 閨の話は到底できるような状況ではない。サウラ様の母親にそっくりな笑わずただ適切に仕事だけをこなすエラ様をみて、重いものがこみ上げる。

 ベンジャミンはまた倒れるのではと案じたが、こちらはあまりにもよく働いている。エラ様の傍にいた事でできなかった事は多々ある。オオガミが持ち帰ったオーパーツの管理と活用。それに城内の警備強化。他にもオオガミとハザキがいくつか仕事を任せている。

 何があったのかをエラ様は口にしない。頑ななところはジェゼロの血か。サウラ様もエラ様の父の事は一度として口にしなかったのを思い出す。

「エラ様、如何しましょう」

 こんな状況でもエラ様は王として粛々と努めなければならない。ローヴィニエの貴族が持ってきた写しとやらを読んだエラ様に問う。

「価値は低い。バジー家を存続させようと必死だな。ローヴィニエの三公爵で国を回す方法もうちと同じくらいに異常だな。もう直に今の王が終わる。たった五年の責務とは、羨ましい話だな」

「均衡が崩れると、周辺国にも影響は出るかと思いますが、コモをやったところでどうにかなるとは。それに、事実かはわかりませんが、現女王がユマ様誘拐を指示したこと、ジェゼロ王家の血筋の村を潰したこと、何が目的かわかりかねます。少なくとも、尊き血を穢そうとしたことだけは確かです」

「思い当たる事は一つある。ジェゼロは特殊な方法で血を守ってきた。それも旧文明の力を使って」

 エラ様がため息を一つ落とす。

「ローヴィニエも古い国だ。そしてジェゼロを神の国としている。つまり、鍵が欲しいんだろう」

「鍵?」

「ジェゼロの儀式の場と同じだ。ジェゼロの血を持って開かれる。普通ならば薄まりほとんど他人と変わらなくなるが女系を保つことで変わらない所があるらしい。それを鍵にして開くモノがあるんだろう。それがあれば、公爵ではなく単独で国の王になれる秘密があるのだろう。だから、リラ・ジェゼロの血統がある可能性に欠けて村を襲ったと考えれば理解はできる。正式には全滅ではなく多くは攫われたと報告があった。それに私を攫うよりもユマを攫えば鍵として十分に使えると考えたんだろう。旧文明の歴史を知っているなら考え付いても不思議はない。」

 エラ様の言う鍵の意味を深く理解はできない。だが、ジェゼロと同じ神を信仰しているならば、神に唯一供物を届けられるジェゼロ王の一族は同じようにローヴィニエの神聖な場へ入れても不思議はないと解釈した。

「三公爵も、何かの鍵を持つ結果、三つ巴が保たれていたのでしょうか」

「かもしれん。それが血か、それとも知識か物理的鍵かは知れぬが……」

 エラ様がふと視線を落とす。

「このまま狙われても面倒だ。いっそコモの妻としてローヴィニエへ入るか」

「そのような事を議会院はもちろん、私個人としても許可いたしかねます」

 直ぐ様に言う。それが冗談ではないと察したからだ。サウラ・ジェゼロの傍にいた。彼女は突飛だと言われるが結局のところ自分で動いて解決した方が早い事を自分の立場を無視して行うからそう見えたのだ。今回の事も、簡単に話をするならばそれが一番かもしれない。使者を通した話し合いよりも単純であることは間違いない。サウラが生きていれば、乗り込んでいただろう。

「エラ様、ベンジャミンが何か不敬を犯したのですか? 処罰をしたくないならばただのエユとしてお話を伺います」

 自暴自棄ともいえる発言にどうしても国王付き解任の理由を重ねてしまう。

「……飽きただけだ。それよりも、ローヴィニエへ出向く話、検討してみてくれ」

 やはり本気か。だが、飽きたという方は嘘だろう。もしそうならばこうも不機嫌になるはずがない。

「それだけの価値があるとならない限り、陛下を危険に晒すような真似はできません。ご理解ください」


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