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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~女王の計略~

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誘拐犯の話 1


 冷戦に入ってから、ベンジャミンはあからさまに兵の訓練だといって場を離れた。許可が出たから帝国の女を呼ぶ算段でも始めたかとも思ったが、窓から見える兵士たちがいつも以上にぴしっとしているので本当に訓練に付き合っているようだった。

 国王の自分よりもベンジャミンの方が兵に人気がある。まあ、国内唯一の騎士の称号をもっているし、見目も頭もいい上に武術もジェゼロ屈指。身辺警護は国王付きの権限として一任されているのであれが合格とすればどこの地区出身であっても城内警護に付けるのも大きいだろう。

 ベンジャミンにユマの世話任せないと決めたのでリセに朝から頼むという逃げに出た結果、子守りがいなくなってしまうという事態が発生した。

 リセが言うリラ・ジェゼロは四代目ジェゼロ王の姉だ。普通は長女が国王となるが、王の儀式をした日に国王にはならんと国を出た人だ。規定的には秋祭りで儀式を行い、出てきたものが正式な王として認められる。それまでは正式な王ではなくあくまでも借りの王位になる。儀式の場からではなくどこからか戻ってきため、正式に王と認められず王代理としてだけ名が残っている。

 リセがジェゼロの歴史に興味があったのは知っている。書庫の本も見たようだが、建国百年間の記録は閲覧できない。嘘をつくにしても、その時分の話はリスクが大きい。なにせ国王たる自分はその間の歴史書の内容も知っているからだ。

 大方の話を確認した後、エユを呼んで話の確認を頼んでいる。実際にリセのいた村について調べてもらう必要があるからだ。

 ローヴィニエ国に対してももう少し精査が必要だ。自業自得のコモ・バジーを引き渡したとしてもこちらにはその従妹たるエユがいる。それまで寄越せと言いだしては面倒だ。ジェゼロに残るバジー家を消す事が現女王の目的かもしれぬ。

 国境付近の村は正式にはローヴィニエの領内ではなかったという。そこを襲うからには、それなりの理由もあったろう。今回、ジェゼロへの書も理由があるやもしれない。

 そう、ジェゼロ王に身を置く自分は、色恋沙汰にうつつを抜かす暇などないのだ。行動一つで国民の生活と安全が左右される。14代も続いてきたのは、それだけの間、私欲に溺れず天命に尽くしてきたからだ。ジェゼロの王はジェゼロ家の女の血筋が就く。男児しか生まれなければ、国を出たジェゼロの女家系を連れてくることになる。リセがもし代々の女人家系ならばジェゼロ王にもなれる可能性もあるが、特別な制度がなければ200年以上、それを保つことは難しいだろう。血筋があるかすら、こうも離れては調べる事は難しいかもしれない。

 ジェゼロ王は女が就くが女王とは呼ばぬ。それは女が王であることが当たり前だからだ。結果他国からは男の王がいると思っている節もある。それに合わせてか、男装で他国の要人と会うのが習わしだ。閨の習慣に至っては、夫として近くに男を置けば、自分のように色事に惑わされ、政が疎かになる事を恐れてと、権力抗争を避けての事なのだろう。不便だが便のいい習わしだと今は思う。

「エラ様、例の者が目覚めたとハザキから知らせが」

 部屋にいなかったベンジャミンが戻ってくるなり言う。

「……ユマ様はいかがいたしましょう」

 淡々と問われる。いつもならば当たり前のようにベンジャミンに任せるか、リセに任せていくところだ。

「連れていく」

 眠るのを起こしたくはないが、残していくわけにもいかない。そっと抱え上げる。もう随分と重くなった。まともに運動をできていないのもあって長く抱えていると疲れて仕方ない。

 怒りと失望は消えていないし、自分から言った以上、ベンジャミンにユマを任せる事はできない。そのまま医務室へ向かう。トワス・コナーは別の場へ移送され、引き続き監視をさせている。


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