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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~女王の計略~

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トワス・コナー 3

「予防措置はしておけ、もう一人が起きればすぐに知らせを。采配は任せる」

「承知しました。別件は如何しましょう」

「エユと一緒に話を聞く。ハザキは医師として兼務を頼む」

「はい」

 それ以上細かい指示は不要だ。ハザキも自分にとっては手放しに信用できる相手だ。実の父よりも父親のような存在だ。これをどうするかは議会院での話になる。どのような刑が下るにしろ、その前に勝手に死なれては困る。

 医務室を出ると、ドアのすぐ前に待機している兵がごくりと唾を飲む。とてつもなく緊張していた。ドアのすぐ横にはベンジャミンがいた。いつもと変わらぬ風だが幾分不快感が隠せていない。

「お前が手を出す必要はない」

 背を軽く叩いてから部屋へ戻る。場合によっては無実の罪で刑に服していたのだ。怒りはまっとうな反応だ。

 部屋に戻るとリセと遊んでもらっているユマが見えた。

「すまないな、遅くまで」

「いえ、左右のお二人からは、こちらを優先するよういつも言われています。お気遣いは不要です」

 流石にあの場にユマを連れて行くのは避けたが、こういう時目を放しても安心できるのはありがたい。警備もベンジャミンが監督しているので以前のように抜かりはない。無論、できる事ならば目の届くところにいてくれるのがいいが、立場上そうも言ってはいられない。

「今日はまだ残ってもらわなくてはならないからな、遅くなるようならば、このまま城に泊ってもいい。帰る場合は兵に送らせよう」

「お気遣いありがとうございます」

 執務室の方へ移動して、執務机ではなくソファに腰掛けた。

 ベンジャミンに執務室のドアを閉める様に手で指示する。大抵は開けているが、機密事項に係るときは閉めている。

「私の口から死刑にしない事が不服か? お前から強く希望するなら、議会院が動いてくれるかもしれぬが」

 鵜呑みにするならば、男の嫉妬に駆られた馬鹿な行動だ。被害者であるベンジャミンからすれば、一発くらい殴りたいところだろう。

「犯人確保に影響を与えたことに関しては厳正な処罰を希望しますが、個人として、興味はありません」

 言いながらも隠し切れない不機嫌さがある。

「どうした? ……言いたいことがあるならば言うてみろ」

 こちらに向いた視線は真っすぐだった。

「絶対に、命を懸けて、口外はしません。エラ様とユマ様をお守りするためにも……閨が誰であったのか、お教えいただけないでしょうか」


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