女王陛下
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朝の身支度を整え、部屋を出る。侍女たちが後ろに付き、護衛が周囲を常に警戒する。もう五年近く絶つか。それでもこれは慣れない。五年やそこらで慣れるような快感ではない。
国の決まりがある。五年ごとに王が変わるのだ。正しくは五年ごとに三つの公爵家が順に王座に就く。つまり次にこの座につけるのは十年もあとになる。バジー家の衰退を思えば早ければ五年。それでも、あまりにも長い。
書類仕事をするためだけの部屋へ入る。それですら絢爛な部屋だ。飾り棚には毎日磨かれる金と銀の器がある。窓ガラスは美しいステンドグラス。重厚な執務机は自分がローヴィニエの王になってから新調させたものだ。
「ジェゼロ国国王より文が届いております」
報告の一番最初に渡される。それがどれだけ重要か執事は理解していると言う事だ。
丁寧な字で書かれた文の最後にエラ・ジェゼロの署名が成されていた。
「傲慢なこと」
内容はただの断りだ。過去のジェゼロ王に比べれば随分と良識的だ。だが、なんとしてもジェゼロ王にはここへ来てもらわなくては困る。
今日の仕事は取りやめだ。
「少し出ます。馬車の用意を」




