神殿の秘密 後
「お前は……ジェゼロの神は何がしたいのだ」
いつもと変わらないロミアがうーんと声を漏らした。
「あれ、隕石を落とすために破壊力が凄いミサイルを打ったの、僕の養子なんだ。正しくは、可採・塞眞って言う人の影武者になって、それを実行した。他に方法があったかは知らないけど。もしもしあのまま隕石が衝突していたら、氷河期みたいになって、気温低下で人類や動植物のほとんどが絶滅していた。粉砕された結果、少なくとも、自転が一度ずれただけで済んでる。もちろん、破片による被害はあったけど、粉塵で太陽光が届かない事態にまではならなかった」
「マシェリアがそれを撃った国に攻撃を加えたと聞いた」
ここはロミアの城だ。あの時の話を後で聞く事はできるだろう。
「検証の結果、あれも必要だった。暴走した国を止めるためじゃなく、世界が安心するために。混乱の中、別の国が暴走すれば、せっかく隕石の危機を回避しても、人類は取り返せない結果に成っていたから。だから、わかった上で必要な犠牲を払ったんだ。ベリルが勝手に話すのはいいけど、あっちも全部の情報を正しく知っていたわけじゃないからね」
「必要だったから、人類を救おうとした子を殺されても仕方なかったと言うのか?」
ロミアは小さく首を傾げた。
「他に、できる方法がなかった。ある中で最良だった。彼は全てわかった上で、決行したんだ。それに僕は人じゃない。こんな見た目をしているけど、人に作られた。だから、僕は、大事な人が決めたことなら、手伝うって決めたんだ」
マシェリアの近くへ行くと、ロミアは器を見上げた。
「ここは僕の趣味じゃないよ。将来、人類進化に使える可能性があるから取っておくように言われたんだ。本来は、ジェゼロ王として認める代わりに、王として最後の務めを全うする約束をしてもらうんだ。エラの時はベリルの一件もあったから、保留にしちゃったんだけどね」
「隠し事はこれだけか」
ロミアの事、オーパーツの事、自分は好いている。だが、信用していいのかわからなくなった。
「三百年以上前からあるんだ。直ぐに全ては知れないよ。それに、昔の事を話したのは歴代の王でも多くない。彼女たちは国をよくするため、安定させるための方法を教わる代わりに次の王を産み、最後にここへ戻ってくれた。僕が言えることは、君たちの為に生きてきたってことだけだ。もしも望まないなら、リラのように自由になっていい。強制はしない」
リラ・ジェゼロには妹がいた。だが自分は最後の血と言われている。立場が、逃げ道の有無が違う。
「……サウラ・ジェゼロが生きているなら、再び起きる事は目覚める事はあるのか?」
ローヴィニエの地下は、器が壊され、腐敗し白骨した遺体があった。ローヴィニエも同じ目的だったのか?
「………サラは。ここに入って短いから、体を蝕んだ癌組織が完全に治癒していない。完治した後、目が覚めるかは、わからない。運用するときには完璧な技術にはできていなかったからね。でも、可能性はあるよ」
その答えに、目頭が熱くなった。
自分は母に望まれて産まれたと思えたことがなかった。それでも、衰弱し、まだ死んでいないのに隠れた時、どうしようもなく寂しかった。自分が殺したのと何が違うのかと自問し、見ないふりをした。
サウラ・ジェゼロは母は、最期に何も言わなかった。だが、最後の力を使うようにただ、私の頬に触れた。母親になった今ならばあの時の目の意味が解る。




