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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~騎士の帰国~

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伯父の心配


 ついこの前までこのサイズだった餓鬼が餓鬼を産んだとは、何とも人類は不可思議だ。

「それで、自国の神を置いてきたと?」

「領内に入ってからの別行動までとやかく言えないだろ。車は坂の下に置いて、大急ぎで上がってきたんだぞー。それにしても、ジェゼロの情報統制も中々のもんだなぁ」

 ジェーム帝国にいた時にはエラの妊娠も出産も噂にすら聞いていなかった。

「? おい、これベンジャミンとの餓鬼じゃないのか」

 妊娠期間くらい知っている。計算して合わないから口にしたら後ろから思い切りエラに蹴られた。

「オオガミ、どう生きようとも勝手だ。だが忘れるな、ジェゼロの風習は今も変わらない」

「……」

 姪子は一年そこらでジェゼロ王らしい顔になっていた。ジェゼロ王の父親は代々不詳だ。実際に不明ではないが、政治関与を防ぐために基本的に極秘だ。国王付きと言う実権はなくとも王に近い立場がそれであったことは流石にない。

「俺が、後であいつにマジな謝罪をする必要はないかだけ教えてくれ」

「ない。私がそれほど軽々しいと思うのか?」

 エラが腕を組みいう。改めて計算する。

「お前……体調は大丈夫だったのか?」

「多少の問題はあったが、肥立ちは良好だ。ユマも腹から出てからはよく育ってくれている。元々ジェゼロ王は難産が多い家系だからな」

 眠る赤子を見下ろしてエラがほほ笑む。子を産んだだけで母親になれるとは限らないが、これは大丈夫だったらしい。エラの母であり自分の愚妹のサウラは母親にはなりきれなかった。破天荒と言われていたが、サウラは幼少に恵まれていなかったのも一因だろう。一因は自分にあっただけに自分もあいつを甘やかしてしまった。

「まあ、なんにしろ、エラ・ジェゼロ過激派のベンジャミンが、妊娠出産に立ち会えなかったのはぶちぎれ要因だな」

 顔面にドアを喰らわせるだけじゃ満足しないだろう。次の手合わせは確実に加減なく殺しに来る。あいつは俺にだけは手加減がない。

「あれがいないとどれだけ大変かはよくわかったからな。次は四六時中手伝ってもらうさ」

 女しか王になれぬのだから、最低でももう一人は必要だ。ユマ・ジェゼロのためにも正式な跡取りは早い方がいい。もし優秀に育ったならば、後が辛い。

「ベンジャミンには、正式に事実を教えてやれ。あいつはお前に対してだけはポンコツだ」

 エラの答えを聞く前にベンジャミンが戻ってくる。下に置いたままの車を上まで運転しにいっていた。今の所、あれを操作できる人間はほとんどいない。そして面妖なそれでは流石に兵に止められた。

「エラ様、品々の確認ですが、如何しましょう」

「無論直ぐに見に行くぞ」

 エラがぱっと表情を明るくすると、その後ろでユマ・ジェゼロが発情期の猫のような泣き声を上げた。楽しみを邪魔されてエラが一瞬落胆の表情を見せたが、直ぐにベンジャミンがおむつを替えて抱っこ紐の中に包み軽く揺らすと泣き声が消える。

「お前、きっしょくわるいな」

「子守りが女性の仕事と言うのは傲慢で怠惰な思考です。男はただ乳を与えられぬだけで、生態を理解すればできることは少なからずあります」

 サウラが泣くエラに対してどうして泣き止まないとノイローゼ気味になって森までやってきたことがあったのを思い出す。女だから子守りが上手いとは言わないが、まあ素直に気色悪い。こんな際までエラの為に搭載しているのか。

「ユマを連れて行っても大丈夫か?」

「危険な場にそもそもエラ様をお連れはしません」

 神にでも使えるようにやうやうしくエラに言う。

「……」

 嬉々とするエラの後姿と、ジェーム帝国にいた時よりもすっと背筋を伸ばしているベンジャミン。それに首を傾げる。同じレベルの馬鹿弟子は、同じように勘違いをしていると思っていたが、それにしてはまともだ。既に事実を知っているだけか。



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