この時代の未来
十七
ジェームは帝国を名にするだけあって侵略や合併が異常にうまいと感心していた。
フヅキ君の代になってから、大きな暴動がほとんど起きていない。優しいというよりも適度に非道でそれ以外は上手く国民を転がしている。以前は調査隊にサウラ・ジェゼロと似た特徴の女性がいたら報告をさせていた。国を広げる事で発見できると思っていたのかもしれない。その過程で死ぬものを極力減らしていたのもうっかりサラが犠牲にならないように配慮しての事だろう。針山をいくつも探した結果今のジェームがあると思うとなかなか興味深い。それにその執着は実らなかったが、エラがいたから彼はまだ救われた。動物と変わらず子を残し繁栄する人の面白い所だ。
「ロミア」
ドアを小さく開けて除いてきた少女が辺りを窺いながら名前を呼ぶ。
「どうかした? カンラ」
呼ぶとおずおずと入ってきてぽすんとソファに座った。
「夢を見ない代わりに、頭がはっきりして……変な感じ」
クッションを抱えてカンラが言う。
「それは薬がうまく排出されている証拠だよ。肝臓への負担があったから、脳の機能の低下が出ていたんだよ。カンラは抗体があったおかげでこの程度で済んでるけど」
カンラに説明をして、本人の許可の許ネロリアの排出を促す薬を使った。年齢以上に幼く少し知能に遅れもあったが、今はそれが改善している。
「……でも、本当にロミアはいいの? 普通の子供に戻っても捨てない?」
「特別な事が出来るから特別っていうのは否定しないけど。特別かどうかなんて、個々が決める事だよ。それに、カンラはいいの? 僕の所の子になったら、いろいろ大変だよ。別にいい家族を探してあげてもいいけど」
僕が決めるなら、適切な家族を選んでそこで普通に生活できるようにしてあげるだろう。この子は僕の保護がなければならないややこしい立場ではない。
「そうね、家族よりも学校を探さないと。わたしね、なりたいものがあるの。だから、勉強しないといけないらしいの」
何と言うか、芯がしっかりとしている。戸惑うところだろうに。
「何になりたいの?」
「……まだ内緒」
「えー。それだと学校を決められないよ」
「いいの」
無邪気に返される。
養子が死んだ日を未だに鮮明に覚えている。今は旧文明と呼ぶ時代だった。どうせまた同じくらい悲しい思いをするのに。




