叫び
どうして、こんな扱いを受けているのかがわからない。
ジェーム帝国が戦争もせずに国を持って行ってしまった。国民が一度立ち上がり、そして直ぐにもとの席に戻っていった。他の貴族たちのほとんどが帝国の傘下に入ることを快諾した。暴動は自然と起きるか金を使って起こすものだ。今回、前者は起きなかった。長年の小さな鬱憤が国民にはあったのだ。だが後者は起きるべきだと言うのに、まるで誰が金を使うか知っているように、手が打たれていた。それがあの恩を知らない子供の所為だと知っている。知っているが、自分はその先を知らない。
自分の産んだ子供を取り上げて夫は言った。これは公爵家の義務だと。愛人の子を見て私は言った。まだ公爵家の義務を果たせていないと。けれど後悔した。どうせ次の子ができると思っていた。愛人が産んだ次の子を養子にしようと。けれどどれだけ待っても次はなかった。
あの人が死ぬ前に、公爵家の秘密を引き継いだ。もう自分に託す他なかったのだ。そこで見つけたのは、私だけの天使だ。
「出ろ」
軟禁されている部屋から連れ出される。こんなハズではなかった。
屋敷の前には見ものする国民がいる。あれだけ慈善活動に金を使ったのに、誰も助ける者はいなかった。
次は何が起きるのか。答えるはずの天使は裏切った。
背中に痛みが走る。熱い吐き気がして嘔吐した。それは赤かった。
「あなたが娘を殺したんだ」
男が叫んだ。
でも、私だって子供を殺されたのよ。




