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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~国王の自戒~

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新芽


 青々とした木々に絵になる景色だ。城の対岸から景色を見れば湖の中の小島と崖の上の城が美しい。

 湖は水力発電を利用するための貯水と太陽フレアを遮断する役目もなしているだろう。基礎以外はこの国の国民が作り上げた景色だ。

 予言が始まりだった。世界が滅びると言うあまりにも抽象的なものではない。あれがなければ人口は今の半分にも満たなかったろう。

 この景色を見れば、オーパーツを残す必要などなかったのではないかと思う。自分を含め機械は文明に利便性と革新をもたらすだろう。だが、本当に必要だろうか?

 ただ、人よりも長く機能を維持できる。それだけの理由で神のような存在として生きてきた。それは、侘しいものだった。生殖機能を持たない自分と違い、産まれ育ち死んでいくのを見てきた。喜びは常に悲しみを持っていた。人だった妻が死ぬのと同じように。

 湖の周りを巡り、城にいこうとすると、城の近くにある船着場で何かを積み込んでいる。

「三日に一度、キングを連れてきてくれ」

「本気か?」

「ああ、俺ばかりが褒美を得ては蹴り殺される。怪我が治られるまでは向こうから出向いてもらうしかないからな」

「あいつ本当は水嫌いなんだぞ。どんだけ面倒かわかって言ってんのか?」

「エラ様が待っていると言えばすぐに来る……ドクター・ベリル。まだ城には行かれていなかったので?」

 ベンジャミンがこちらに気付いて言う。ベンジャミンの前にはガタイのいい青年がいる。その近くに泊まっている小舟にはエラがいた。その腕には赤子が抱えられている。

 そういえば、帝王が本気でジェゼロへ向かおうとしていた時期がある。リンドウに見つかり、説教部屋に入れられて出てきてからはそのような奇行に出なかったのを思い出す。ローヴィニエに連れて行かれた理由を脅されてだと言っていた。その内容に合点がいく。

 ああ、やはり困る。人のように死にたいと思いながら、悲しみが待つとわかりながら、新しい命に頬が緩む。




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