謹慎処分 3
結局抱えて執務室へ運ばれる。中で自分の代わりに王の席にオオガミがユマを抱えて座っていた。ソファに置かれると足の下にはクッションを配置された。その上、オオガミからユマをもらい受けると、ベンジャミンがそれをこちらに渡す。ユマが満面の笑みで手を伸ばす。
「また、随分と無茶をしたみたいだな」
オオガミが呆れ交じりとも笑い交じりともいえる声で言う。さっきの会話も全て聞こえていただろう。自分の部屋に他に人がいるなど考えなかった。
「迷惑をかけたが。見ての通り無事に戻れた」
「足に火傷を負っていますのでしばらく歩行はできません。詳細はジェームの医師に確認を。毒性のあるガスをエラ様と自分も少し吸ってしまいました。後遺症はないだろうとの事ですが、あまり無理をしないように忠告を受けています」
ベンジャミンがオオガミとハザキに勝手に報告をする。
「そうだ。今ここにもういる必要はないだろう。ここは王の許可なく入れぬ部屋だぞ」
こちらを見もせず代わりにオオガミに視線を向けた。
「トウマ様、ご許可をいただても?」
「ん? あー、あー……許す許す。好きにしろ」
「その態度はなんだ。私に言いたいことがあるならばはっきり言えばいいだろうっ」
ついカッとなって大きな声が出た。ユマが驚いて泣き出す。それをひょいと抱え上げてベンジャミンが優しくあやし始める。
「どういう状況だベンジャミン」
ハザキがいつもの厳しい表情で問う。ようやく援護してくれる者が現れた。
「何のことでしょう」
真顔で返すベンジャミンとこちらを一瞥する。
「ロミア様より状況の報告は頂いている。お前の怪我の状態は? それと、単身で無茶は控える様に」
「急を要していました。最低限の事しかできなかったことは申し訳ありません。今後はこのようなことにならぬよう、エラ様のお傍を離れることは致しませんのでご安心を。怪我についてはトウマ様とじゃれ合うよりも軽傷です」
「国王付きは解任したはずだ。勝手を言うな。それに、私とだけ口を利かぬとはどういう了見だっ」
ユマに頬を寄せ、その眼でこちらを横目で見た後、視線をハザキに戻した。援護を期待し自分も見るとハザキが口を開く。
「議会で国王付きについて正式に話しをされていませんので、承認はまだされておりません。それと、現在の国王は代理とは言えトウマ様になります。これも次の議会院で王座を返上しなければエラ様を王位にはお戻しができません。国王代理は王が病床に臥した場合などの緊急の措置。現にお怪我をされているというのならば、それが改善するまでは国政が滞りますので医師としても許可はできかねます」
ハザキが真顔で言う。あまりにも頭が固い答えが返ってきた。
「くくっ。そんな顔をすんな。しばらく安静にすればいい。お前が王様に戻るころにはいろいろやり易くしといてやるさ」
「トウマ様の一存で全てをお決めになれるとお思いにならぬよう」
「お前も賛成していた事だろう。それとも何か? 国をよくすることに反対なのか」
「あまり駄々子のようなことはおっしっゃらないで頂きたい」
国王代理とハザキがとても楽しそうであることは理解した。いや、オオガミならば自分よりもいい国にできると思っていたし、もしもの事があればと、国が混乱しないように命を出した。これは予想していない。
「王の寝室をご使用で?」
「あ? 代々の女の寝所を使う気にならないからな。お前の部屋を借りてる。ここから近いしな」
「まあ、それは構いませんが……。城では結局体を休めることも難しいでしょうから、エラ様にはしばらく島で静養頂いてもよろしいでしょうか? 身の回りのお世話は自分がいたします。生活をするに十分の施設もありますので」
「なっ」
何を勝手なことをと言う言葉すら詰まる。




