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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~国王の自戒~

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ジェゼロへ 後

「……誰だこんな場所に城建てたやつは」

 ロミア様に対する愚痴をこぼされる。

「車体が重いのでしょう。オオガミ達が使った物は登れました。下に戻すよりも上まで押させた方が早いのでは? もうそれほど距離はありません」

「そうだな。急に落ちても危ないからエラは下ろしておいてくれ」

「承知しました」

 復刻した技術はまだ完璧ではない。後ろへ戻りドアを開ける。

「まさか、担いで行く気じゃないだろうな」

 ちゃんと服を着替えて下さったエラ様をそれまで同様にやうやうしく抱える。太腿の感触も胸が当たる事も含め、今回の褒美と受け止めている。

 車から降りると、キングが乗せろとばかりに横で止まる。キングに対して恩は感じている。だが自分にとっては敵でもあると今回の一件で再認識させられた。

「き、キングに乗ればいいだろう」

 エラ様からの申し出を無視して急な坂を上る。横をついてくるキングはエラ様の状態を観察しているようだ。帰る道中も何度かふれあいの時間を取っている。エラ様の癒しと、キングへの褒美も兼ねている。

「お、下ろせ。命令だ。こんな辱めを受けるいわれはないぞ」

 登りきるとホルーが直ぐにキングの元へ駆け寄った。

「十分にいい草を与えてやってくれ。怪我が治れば乗れるように手配する」

 キングに対しても言葉を言ってから城内へ入る。色々と諦めたエラ様は両手で顔を隠してしまわれた。

「エラ様はご無事なのね」

 城から駆けて出てきたエユ様がこちらを見てどう判断すればいいのか少し困った顔をされた。

「おみ足に怪我を、悪化を避けるためにもしばらくは歩くことはできません。坂の途中で乗り物に故障があったため私がお連れしました。他に大きなお怪我はありません。ユマ様は?」

「そう。なら良かったわ。ユマ様はお元気にされています。ただ夜によく泣いているようですけれど」

 一番の心配事だったが、ひとまず安心だ。

「もう、いい加減に下してくれ」

 懇願に近い言葉も聞き入れる気はない。それよりも常々感じてはいたが、エラ様の体重か随分落ちている。これでは羽根布団の方がまだ重い。

「ひとまずお部屋までお連れします。ジェームの方々が付き添ってくださいました。もうすぐ上がってこられると思いますので対応をお願いいたします」

「え、ええ」

 階段を上がり陛下の部屋まで向かう。警備が抱きかかえられたエラ様に少し驚くが特に何か聞くことはない。

 開けられたドアの先、応接場は窓が覆われやはりまだ薄暗い。

「ユマ様をこちらへ連れてくるように」

 兵に言ってからエラ様をソファへそっと下ろす。

「覚えて置け。このような事をしてっ」

 エラ様がきっと睨み言う。なんと可愛らしい動作だろう。

 泣き声がしてドアが開く。リセ・ハンミーの腕に抱かれたユマ様がいる。

「その」

 何か言いかける相手からユマ様を受け取り柔らかく抱く。

「許可をした覚えがないぞ」

 エラ様が凄むが気にしたことではない。自分の子を抱くことに、誰の許可がいるのか。

「リセ・ハンミー。そこへ」

 リセもソファへ座らせる。



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