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国王陛下育児中につき、騎士は絶望の淵に立たされた。  作者: 笹色 恵
~国王の自戒~

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ベンジャミンの反抗 後

「ロミア様の放浪にも迷惑をしています。そもそも旧文明から今まで神として生きてきたのですから、辞めるにしてもちゃんと始末をしてからにしていただけませんか。帝国は優秀な人材や手法があるでしょうが、ジェゼロは今回のようにいまだに神の国などとそやされ迷惑をしているんです。それに、他にもジェゼロ王の血が使える隠し場があるのでしょう? そういうものも一度確認していただかないと。無知では対応に困りますので」

「まあ、それに関しちゃフヅキがご立腹だからな。あいつも娘への溺愛は国際問題に等しいからな。まあ、ロミアは二・三か月国にもどるだろうから、それまでに滞ったオーパーツ系は担当してやるさ」

「ロミア様とオオガミの子守りの次はあなたの子守りですか? 今は一人で手一杯なので本当に勘弁してください」

「まあ、そういうなって。ほら、車の用意はしてるから、とっとと行くぞ。早く国に戻れるようにしろって言ってたのはお前だろ」

 それにベンジャミンが諦めたようにため息をつく。

 近づいてくると、布団を剥がれる。何も言わずに体を抱きかかえて持ち上げられる。もう何度もこれをやられている。トイレに行こうとすると毎回抱えられて運ばれ、用が済んだらまたベッドに戻されてきた。その間に何か声をかけてくるわけでもない。ユマを相手にするように言わずとも理解され世話をされている。羞恥もあるが、そこまでしながら何も言ってこないのにいっそう腹が立つ。

「車いすで移動できるだろう」

 最初にそんなことしなくていいと暴れたら、あからさまに背中が痛む様を見せられた。ベリルからも下手に負荷をかけるとベンジャミンの傷に響くと注意され、暴れることは止めたが、文句は言う。そして今回も無視された。

「ご依頼していた事は?」

「ああ、ずっと機嫌が悪かったらしいからな」

 抱えている人間を放っておいて二人で何か言う。階段を下りるときまで抱えられたままだ。ジェゼロに付けばこんなことはされないだろうが、それにしたってひどい扱いだ。ダイア・アカバよりも酷い。

「キング、待たせたな」

 ベンジャミンが言うので振り返るとキングが待っていた。

「どうしてここにいるんだ」

 抱えられているのも忘れて手を伸ばす。真っ黒い首に抱き着くと涙があふれかけてぐっと堪えた。大きな猫が理不尽に殺されたのを思い出してしまう。

「今はお怪我で乗せられない。安心しろ、今回の功績は十分承知している」

 ベンジャミンがキングに対して真顔で話しかける。キングにまで話すのかといら立ちが募る。

「お前のお陰だ。ありがとう」

 あまりにもまじまじと見つめあうので暴れてやろうかと考えてしまう。

「いくぞ」

 ベリルに声をかけられて、もう一度キングに対してベンジャミンが頷いてから、オオガミがジェゼロに帰って来た時に乗っていたのと同じ馬のない車に乗せられる。オオガミの乗ってきた者と違い、中は小屋のようになっていた。小さなベッドまである。

「まさかキングがお前を乗せたのか」

 ふと、キングがいる理由を考えて問う。あれは何故かベンジャミンを毛嫌いしていた。国を追われた時でさえ、一度もキングには乗らなかったと言うのに。

「早く帰りましょう」

 ベンジャミンがこちらではなくベリルに向かって言う。



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