ベンジャミンの反抗 前
ユマの事は心配ないと聞いた。弓の手品は初めからわかっている。はなから暗殺者はいなかったのだ。結果自分がした愚行で帝国には迷惑をかけた。
部屋の隅で待機する事を辞めない男を未だに見られないのも問題だった。一度だけ先に帰れと言ったが無視された。文字通り何も聞こえないようにふるまわれた。その癖にベリルには人の状況を根掘り葉掘り聞き、警備や食事にまで口を出している。ただ直接は何も言るってこないのだ。
わかっている。自分の馬鹿な行動を咎め呆れているのだ。助けに来た時に幻覚が見えだしたのだと思った。足は火膨れができてその上あんな靴で歩かされたからしばらくは歩く事は禁止されている。あのまま倒れていたら、もう少し長い時間火にかけられていれば、死んでいたか広範囲の大火傷を負っていただろう。結果だけを見ればベンジャミンが下した無謀な判断が自分を救ったのだ。だからこそ、来る必要がなかったなどと言えない。
もう、国王付きは解いた。なのに、どうして助けになんて来た。義務を感じる必要はないのに。別に好いた相手がいるなら、身を危険に晒すなど必要のないことだ。
「……」
ベッドで身じろぎをして横を向く。熱で死にかけていたときに、聞いた言葉を忘れたわけではない。わかっている。自分の思い込みの可能性があることくらい。だけど、これ以上やつを頼り依存したらもう抜け出せなくなる。こんな無謀なことをするバカな自分に本当に愛想を尽かされる日が来るかもしれない。そもそも、子を産んだら、魅力が減って浮気されると聞いた。そんなのを耐えられる気がしない。
「エラ。体調はどうだ?」
部屋に入ってきたのは褐色の肌に緑の瞳、それに銀の髪をした青年だ。自分の知る神官はもっと壊れかけた異形の者だったが、これが本来の姿だという。以前の威厳がないが、医学に長けているということで面倒を見られている。わざわざベンジャミンのベッドを同室に置いて、夜まで逃げ場を奪った張本人でもある。
「足の裏以外は大丈夫だ」
「じゃあ予定通りに国に戻るか。こっちの事はロミアに任せておけばいい」
「ロミア様を置いて行かれるので?」
ベンジャミンが問う。こっちには依然として話しかけてこないというのに。
「ああ、あいつも組織管理に関しちゃバカじゃない。安心しろ、代わりに主治医が同行してやる」
「ベリル様は大人しく帝国にお戻りください。ジェゼロではただのジェームの医師としてしか待遇をできないでしょうし、社会見学ならば、どうかジェゼロとは関係ない場でお願いいたします」
神官に対してベンジャミンは辛辣だ。いや、オオガミに対するそれと似ている。
「ベンジャミン。神官様に対してそのような口の利き方はよせ」
王として注意をするが無視される。




